番外編

□天つ夢路の先視なら
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 夜闇の帳(とばり)が落ちた空に輝く星達は群れをなし、天に大きな川を作っている。
 その下に位置するのは五位蔵人の藤原尚秋が住まう邸。
 そこの一室では昼は尚秋の従者として働き、夜は女房仕事に深夜は狩り人を追うという激しい職務内容に疲れ果て、深い眠りに落ちているつゆさがいた。
 世の女性が素敵で切ない星々の物語に胸を高鳴らせ、ある人は愛しい男性と。ある人は一人で天の川を見つめ七夕の夜を楽しんでいるというのに、まだうら若き乙女である彼女はそれを嘲笑うように熟睡中だ。
 …………長く男の姿をしていると中身まで少年になってしまうのだろうか。
 格好だけでなく内面まで本当に男になっては可哀想だと織姫と牽牛(けんぎゅう)がつゆさの状況に同情したのか、はたまた自分達の逢瀬を慈しまなかった罰なのか、彼女は不思議な世界へと誘(いざな)われていく…………。



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