番外編
□朝露に消える夢の花
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いちいち煮え切らぬ態度が気に食わん。
【朝露に消える夢の花】
晴天、というのだろう今日の空は憎らしいほどに冴え渡り、墨でも食らわせてやろうかと思う。
「待て待て、ちょっと待て! 本当に待て!」
「触るな、汚らわしい」
硯(すずり)を持ち上げようと手を伸ばすと何故か即座に止めてくるこの隣の男、名は確かヤエガキだったか。
興味ないので名などどうでも良いが、早く私の腕を掴むその墨に汚れた手を離してはくれまいか。
でないと殴ってしまいそうだ。
「わ、悪い! すまぬっ!」
「…………ふん」
不穏な視線を感じたか腕をパッと離す奴に嘲笑をくれてやる。なにやら物言いたそうに震えているが知るか、言葉にしないものの話など聞くに値せん。
乱暴に腕を引いて再び硯に手を伸ばすとまた止められた。
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