夢、幻の想いや如何に

□月見の宴
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 朝からいそいそとなにかを用意する紗枝に疑問を持った透子は、首を傾げながらそれを紗枝に問うた。





「姫様ったら。あんなに今日は満月ね、と言っていらっしゃいましたのに」



「満月?…あ、」





そこでようやく紗枝の行動の理由が分かった透子は、そうだったわね、と紗枝の横に座った。

紗枝の手には、どこからかも持ってきたすすきが握られている。ふさふさとしたそれを指でさわりながら、透子は空を見上げた。





 中秋の名月。

その日は最も月が美しく見える日とされている。

宮中でも月見の宴、または中秋観月と呼ばれる宴があり、月を愛でながら詩歌管弦の催しものがおこなわれる。

当然のように朔や臣下達も今日行なわれるこの行事に参加する。しかし、帝の寵愛を一心に受けるこの后は、その行事に参加することを朔から止められていた。

その理由は。

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