現代 恋愛

□婚約者問題
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「ふざけんなぁ!」


俺こと、斗宇野咲人(とうのさきと)は、とうとう痺れを切らし、実の親父、輝世紀(きせき)に向かって叫び声を上げた。


「そう怒るなよ。自業自得だろ?」
「くっ」


俺が生まれた家は斗宇野グループという一流企業。「赤ん坊から老人まですべてサポートする斗宇野グループ」といえば、知らない人は日本国民ではないといっていい。


 俺の親父は、そのグループの会長。一人息子である俺は必然的に斗宇野グループの御曹司というわけだ。
でも、俺はそんな斗宇野グループなんて継ぎたくない。レールを敷かれた人生なんて嫌だ。
と、いう俺の願望は、無視されている。反発をしたら祖父さんにすごく怒られたから反発することをあきらめたが、17までに婚約者を作るという馬鹿げた斗宇野家独特の掟は17になった今でも無視し続けていた

 その結果、親父が勝手に婚約者を見繕ってきた。しかも3人。


「ふざけるなよ! 勝手に婚約者決めるなんてなんて親だ!」
「こんな親だ」
「開き直るな、くそ親父! しかも3人って何だ! どうすんだよ、斗宇野グループ御曹司が3股か!」
「おおう! やっと自覚してくれたか! お父さんはうれしい!」
「自覚はとっくにしてるわ!!! 世間体の話してんだ、このバカ親父!」


この親父は、話が通じなくて困る。そんなのが親父だから俺は反発しているということにいまだに気づいてもらえない。


「いやいや、決めたのは、心恵(このえ)さんだよ」
「はぁ!?」


心恵さんとは、俺の母親の名前だ。そこそこ売れている小説家の名前でもある。父親が決めたことには反発するが、母親の決めたことは反発しないという俺の心を見抜いて母さんに決めさせたな。


「あきらめろ、咲人」
「こ、このくそ親父――――――!」
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