<main>BLEACHオリジナル小説 -長編- 第二章

□future〜第二章〜(前編)迷走・再会編A
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「―ったくよぉ。こちとら復興作業放り投げてまで来たっつぅのによぉ。人を変態扱いしやがって。この狂暴女っ」
「うるさい!とにかくお礼は言わないからね!!」

ぎゃあぎゃあと喚く二人の怒号を、弓親は爽やかな笑みでさらっと流す。
「正確に言うと、僕等はほぼサボっていたんだけどね、復興作業」
「で、しょうねぇ。あんたの服、妙に綺麗だし」
目をすがめ、やれやれと息を吐く。
「だって、この方が美しいでしょう?」
持ち前の美意識は、気持ち程度にも薄れていないらしい。
「はいはい。それよりも…―、波音!」
獣の如く牙を鳴らす二人の喧騒に声で矢を放ち、友を無理矢理にでも引っ張り出す。
きょとんと目を向けた彼女を、"いの"は真顔で見返した。
「急いで、桃とマタムネを捜さないと」
「あ…―。うん!!そうだね!でもどうやって…」
思案するように首を捻り、波音は吃[ども]る。
それに対し、"いの"は驚くほどに凛然と答えを返したのであった。
「望は薄いけど…―。そこはほら、私達、というか、この世界の摂理に則って、捜すしかないっしょ」


同じく―。
瀞霊廷、上空。

人の目よりもくっきりと開いたそれは、遥か目線の先―。
この世界を、逆さになったような気分で見ていた。
「此処は…―!?」
「此処が…―」
彼女が此処に来るのは、先の二人と同様、二度目である。
「ソウル・ソサエティだよ、マタムネ…―!!」
桃の鼓動など、もはや破裂寸前だ。
「此処が…―、ですか…!?」
何をどうすることも出来ずに、宙に浮いたままの心と体を持て余すばかりの、両者。
正しく夢心地。
ふわりとした感覚から、然るべき事態が発生して、両者の糸もぷつんと切れた。
「桃さん!!落ちてます!!」
「分かってるよ!!」
気圧に圧されて、耳も、心なしか臓腑の全てが痛い。
あの微笑みの光が舞い降りたのは、その直後である。
「桃さん!!」
「紅、桜っ…!」
「今助けます!!」
添えられた手。
マタムネに合図するつもりで、閉じかけていた瞳を再度開いた。

―あれは、何?
正しく、眼下に微かに見えるそれは、何処か妖艶に、そしていびつに、揺らめいていた。
赤い―。
炎だろうか。
が、その中央に、それとは対照的な小さな息吹を感じる。
霊圧―というやつだ。
桃の瞳孔が、擦れてしまうほどに揺れた。
光を見出だし、心が騒ぐ。
「紅桜―」
「はい!」
「やっぱり、助けてくれなくていいよ」
「え…―?」
「桃さん!?」
目を剥くマタムネを半ば無視して、桃は柄を握り、具象化した紅桜の姿を消した。

これは予感だ。
だから、ひょっとすると、無駄死にしてしまうかもしれない。
けれど、もし、貴方なら―。
命を懸けるだけの価値は、十分にある。

「このまま突っ込むから宜しくね!!」
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