-短編-

□言えない(完結)
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「・・・そういう功も、サボリでしょう?」(いの)
「俺は・・・・っ、お前の事が気になって」(功)
訳も分からず、けれど此処に居る事を嫌がって、ひどく泣き崩れていた彼女を、見てしまったから。
が、いのは・・・。
「迎えなんて要らないし、功はちゃんと朝練行ってよ!!私の事は、いいから・・・!!」(いの)
重荷には、なりたくない。
功の瞳が、これまで見た中で一番激しく揺れ動いたが、とにかくそれすら目を剃らして、彼女は進んだ。

癒衣の強い意志を、知ったのに。
白哉の想いを、知ってしまったのに。
笑えない。
何も知らなかった、あの頃の自分には。
もう、戻れない。
戻っちゃいけない。
自分だけが、功の前で笑って。
言えなかった、たくさんの言葉を伝えて。
楽に、生きるなんて。

「出来ないよぉぉ・・・・!!風影・・・・・!!!」(いの)
功を一人残して、学校に向かう途中で・・・。
堪えきれず、ふらついた足取りで、泣いた。
想いが、溢れて。
顔をくしゃくしゃに崩して、まるで園児の様に、泣いたのだ。

仮に、今。
桃と波音に会ったなら、それこそ彼女の涙は、きっと、止まらない・・・・―。
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