-短編-

□涙の後(完結)
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「・・・すまぬ。儂が付いていながら、お主達に辛い思いを。それに、お主は、・・・好きだと、聞いた・・・。海燕の事を」
遠慮がちに、金色の瞳が私を覗く。
「桃達から聞いた?」
黙って、頷いた夜一さん。私も、自然と黙った。
「・・・お主とはまた違うが、儂も、想っていた相手と別れた事がある」
「え?」
「お互い、意志が固くてのぉ・・・。もう少し理解し合えていれば、今頃肩を並べられたろうに」
寂しげに、目を細める夜一さん。

「じゃが、今頃もう遅い」
強く言い切る夜一さんに、私は困惑気味に聞いた。
「でも、もう会えないって訳じゃないんでしょ?その人とは」
と、いうか、夜一さんって今んとこ猫の姿だけど、相手は普通に人と考えていいよね?
「・・・さぁ。可能性としてはだいぶ低いな。何せ奴はこの世界には既に居ない。生きては居るじゃろうがな」
「そうなんだ・・・?」
「何より心が・・・一度そう離れてしまっては、きちんとまた目を見て話せるかどうか・・・」
黙って聞いている私に、夜一さんは何とか言葉を伝えようとする。
「つまり、儂が何を言いたいかというと・・・、心が、繋がっておる。お主達と、海燕は。最後に託されるというのは・・・、幸せな事じゃよ・・・―」
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