<main>BLEACHオリジナル小説 -長編- 第二章

□future〜第二章〜(前編)迷走・再会編A
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凛然と空を舞った、輝く息吹。


半壊状態の、十一番隊隊舎にて―。

瓦礫を手にしていた彼等の手が、一瞬にして、その動きを止めた。
一角の、決して穏やかとは言えない形相が、揺らぐ。
「……弓親。気のせいだと思うか?」
髪をかきあげ、自身の優美に浸る彼も、わなわなと震え出したのである。
「思わないね……!!」
誰よりも、待ち望んでいた。
虚勢を張るわけでもなく、全てをさらけ出して、そう言える。
彼女達を忘れたことなど、あの日から、一日たりとも無いのだから。

恋しい―。
何度、そう心に浮かべたことか。
俄然速い足取りで、彼等は進み行く。
もはや、掴みかけた瓦礫など皆無である。

ああ。
この瞬間を、泣いてしまいたいほどに、待ち侘びていた―。


瀞霊廷、上空。

「うそぉ……!!」
眼下にそびえる幾多の建物には、どれも、覚えがある。
あの超絶なる不死鳥に導かれ、望んだ場所―その上空に、彼女達は確かにいた。
声をあげた波音の横で、同じく宙に浮く友は、目をしばたかせる。
信じがたいが、これは夢ではないらしい。
今、この場で、頬でもつねってみようか。
「て……、あれ!?桃は!?あと、何故かマタムネもいたよね!?」
「え」
波音が呈した疑問に、"いの"も僅かにうろたえる。
そうだ。
あの時、確かにマタムネの姿も在ったのだ。
まさか違う場所に飛ばされたわけではないだろうから、此処ではない、何処か別の上空にでも誘われたのだろうか。
が、彼女達に、その謎を解き明かす時間などとうに無いのである。

宙に浮いた体。
この後に降り懸かる顛末は、当然、こうなる。
「ぎっ、ぎゃあぁぁぁ!!」
波音、絶叫。
凄まじい速度と共に、華奢な体が地へと落ちて行く。
「波音!!落ち着いて!!」
とは言え、真面目にどうにかしなければ。
"いの"は柄に手を伸ばし、咄嗟に風影の名を呼ぼうと試みた。

が、ふわりと。
思いの外柔らかな手に引かれて、宙を舞う。
更に引き寄せられて、何とはなしに身をよじってしまった。
波音も、同様に。
双方、緩やかな風と、確かな腕に導かれて、一際高い屋根の上へと無事に足を着けたのである。
僅かに開いた口が、彼等の急な登場を物語る。

まじまじと見つめ、弾みかけた息を辛うじて押し込めた。
「弓親……―?」
「やあ。怪我はないかい?いの」
散りばめられたかのように笑う、彼。
一瞬の勝負の末に、あるいは結果以上のものを得た、あの日の敵、そして友。
二度と会うことはないだろうと思っていた彼が、今、此処にいる。

「たくっ…―。相変わらず騒がしいなぁ、テメェらは」
懐かしむように、慈しむように、恐持てでまかり通る不屈な男が、笑った。
一角だ。
波音の心臓が、訳もなく跳ねる。
「一、角……―」
ああ、何故。
急に視界が狭まり、うろたえる。
泣きたいのだろうか、自分は。
笑っていろと言われた。
俯きたくて、声も途切れたあの折に、彼は強くそう言い含めて、引導を渡した。
笑っていたかった。
負けたくはなかった。
けれど、あの日を思い出す度に、心身共にひどく軋む。
上を向いていろと。
貴方はそう言ったのに。
「一角……―!!」
「何だ…―?」
抱き着かれるかと。
ほんの一瞬だけ、一角はそう思った。
が、快進の一撃が、彼の頬をぶち抜いた。
"いの"に浴びせた時よりも、強力な手捌き。
弓親と"いの"が、二人揃って唖然呆然。
「なんっで、上半身だけ裸なのよ!!全裸ならもっと困るけど!!私もうお嫁に行けない!!」
「何の話だよ、一体!!」
先程までのやんわりとした雰囲気が、全てお粗末に。
「あんた達ねぇ……」
まぁでも―と、"いの"は笑う。
この方が、きっと、彼女らしいに違いない。
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