<main>BLEACHオリジナル小説 -長編- 第二章

□future〜第二章〜 (前編) 迷走・再会編@
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そこは、闇だった。
別の次元に存在する、二つの世界。
現世と、ソウル・ソサエティ。
更に、その奥がある。
ソウル・ソサエティの裏側。
そこが、闇だ。
堅く閉ざされた空虚な世界で、生きる事を余儀なくされた者達が居る。

虚[ほろう]。
そう、彼等である。大小様々な彼等の容姿は、かなり異質なものであり、扱える人語も疎らで、正確さに欠けている。
彼等は今、とある命[めい]を受けている最中だ。
彼等にとっても懐かしい者達との、接触。

彼等に命令を下した者達は、正しく、その中央に居た。
一人は女性。残り二人は、男性だ。
女性は、腰まで伸びた艶やかなウェーブ状の黒髪を有している。
バスト、ウエスト、ヒップ。どれを挙げても、文句無し。更に甘美なる声もそこに合わさると、より一層彼女の色気が漂う。
魅惑の女性。彼女の名は、ラスト。
その両脇で腰を下ろす、男性陣。
どこと無く童顔で、憎らしくも可愛いげがあり、幾多にも分かれた長髪を振り乱している、彼。一見華奢な様に見えて、割と必要な筋肉はきちんと兼ね備えているのだ。
彼こそが、エンヴィー。笑顔の裏に隠された底無しの闇を、決して見誤ってはいけない。
残る、一人は。細身に対して、巨漢。
とにかく、食べる事が大好き。そんな彼の体は、すっかり肥えてしまっている。
頭髪が無い為、丸まっていると本当にお団子の様にも見えてくるのだ。
単に空腹を満たしたいのか、時折覚える寂しさを掻き消してしまいたいのか…。それは、本人でなければ分からない。
彼に与えられた名は、グラトニー。彼の行為がただの暴食ではない事を、ここに宣言しておきたい。

闇が、再び動き出した。
「ねぇラスト、まだぁ?」(エンヴィー)
口を尖らせ、頬杖をつきながら気を紛らわせようと奮闘中の、エンヴィー。
「まだよ。まずは、探さなきゃ」(ラスト)
割と真剣な話の途中なのだが…。グラトニーにとっては、さほど重要な事ではないようだ。
「現世の魂、おで[俺]がぜぇ〜んぶ食べるぅ」(グラトニー)
これに人語を与えた事自体が、そもそもの間違いだったのでは。
互いを見合い、胸中で、いつもの様にそう語り合ってしまう、ラストとエンヴィーであった。

「用が済んだら、好きなだけ食べなさい」(ラスト)
既に、何頭かの虚は放ってある。後は、食らいつくのを待つのみ
ラストの言葉に、グラトニーもさぞご満悦だ。
「楽になんかさせないわよ…!私達が居る限りね…!」(ラスト)
「さぁて、お楽しみの始まりだ」(エンヴィー)
エンヴィーの心も、かなり高揚している。

今頃彼女達は、ソウル・ソサエティで受けた心の傷を抱えて、絶望に喘ぎ、苦汁を呑んでいる筈だ。
今、行く。
闇が、激しく動いた。
目指す場所は、現世。
この時を、喉から手が出る程に待ち望んでいたのだ。
忘れさせやしない。
更なる、絶望を。

雛森 桃。
宝生 波音。
山中 いの。

神は…彼女達に、再び試練を与えようとしていた。
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