-短編-

□言えない(完結)
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朝。

「・・・・・・―」(いの)
頭が、重い。
この感情を、何と呼ぼうか。
彼女自身も驚いた程の、あの怒号。
“こんな結末を迎える為に、私達は強くなった訳じゃない!!!”
怒りに任せて口から出た言葉だが、全てを否定した、あの心は。
「かっこ悪い、私・・・・・!!!」(いの)
辛かったのは、きっと。
自分だけではないのにと、そう、後悔して・・・―。

学校に行く支度を整え、リビングに下りた彼女を、両親は何とも言えぬ表情で出迎えた。
「いの・・・・昨日・・・―」
「行ってきます」(いの)
母の言葉を振り払い、いのは足早に家を出た。
功に引っ張られ、何とか辿り着いた、我が家。
けれど。
両親に事実を告げる事は、出来なかった。
もう一人・・・・・。
誰よりも、功に。
言わなければ、ならなかったのに。
「・・・・・よぉ」(功)
彼女が、門を開けたその先に・・・正に、制服姿の彼が居たのだ。
いのは、視線を泳がせたまま、とにかく先を急いだ。
「いの!!朝練は!?」(功)
彼女が休まず参加してきた、弓道の朝練。
この時間の出発では、もう間に合わないと、分かっていながら。
避ける様に進み出した彼女に、功は必死に声を掛けたのだ。
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