-短編-

□失いたくない(完結)
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ゆっくりと、桃の体を運び、横にさせ、冷えない様にと、薄い布を何枚も重ね、それをかけた後、シロちゃんは傍に座り込んだ。

向かい側では、紅桜も腰を落ち着かせていた。

「・・・守るべき相手に、逆に守らせちまったなぁ」
桃の髪を、優しく撫でる、シロちゃん。
「なぁ、紅桜」
「はい?」
「やっぱり雛森は、悩んでたよな?俺と恋次や、松本の事とか・・・」
お互い、その話は極力避けてきたのだが。
「ええ、まあ・・・、そうですね。でも・・・、桃さんも、当に覚悟は出来ていましたよ?向き合う、覚悟を」
ただ、戦うだけではなくて。
「・・・・失わせたくないと思ったのでしょう。貴方に、大切なものを」
紅桜を見たシロちゃんの瞳が、揺れた。
「向き合うって・・・、そんな」
「言葉で言われなくても、桃さんは分かっています。貴方が決して、彼等を諦めていない事を」
それを、受け入れた桃。
「ですが正直、貴方にとっては、このままだとそれ以上に失うものがあるのでは?」

恋次や、乱菊よりも。それ以上に失う者は、ある。

「ああ・・・。けど、俺は・・・」

失いたくないものは、沢山ある。恋次や、乱菊、そして、心を締め続ける、あの人との記憶も・・・。
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