-短編-
□涙の後(完結)
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初めて髪止めを身に付けた、あの日の夜。
月明かり、皆が寝静まったのを待って、また川辺へと足を進めた。
さっきまで、桃が日番谷君と何やら声を荒らげて話していたような気もするけど、何とか落ち着いたみたい。
今日一日で、色んな事があって。あの人を想って、今にも潰れそうな心が、ほんの少し軽くなって・・・。だけど、阿散井君が日番谷君の親友・・・。それも又、凄く複雑だった。
川辺まで辿り着くと、何とも涼しげな風が包み込んでくれた。大きく息を吐き出し、水面を見る。
「好きだって伝える事、出来ないんだよね、もう・・・」
海燕さんの死は、辛い。これからも、ずっと。でも。この自覚した想いを、伝えられない事が、更に辛い・・・―。
「眠れぬのか?」
驚いた。近くに積み重なっていた岩の上に、夜一さんが居た。
「夜一さんこそ、こんな時間に何を・・・」
「念の為、いつ敵襲があるか分からぬからな・・・。見張りじゃ」
いつも、忘れてしまう。そうなんだ。私達の為に、恐らく毎晩・・・。頭が、下がる思いだった。
「有り難う・・・。今日からは、ちゃんと眠れると思うから」
私の何気無い言葉に、夜一さんが何か言いたげに顔を上げた。