君を想う

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 俺の目の前の光景には、窓際に腰の中間まである長い髪を下ろして白のボレロ羽織ったムラサキが車椅子に腰掛けている光景だ。

「ウタちゃん、来るのが遅すぎるよ! もぉ〜アタシ待ちくたびれちゃったよ。ってのそ後ろの子は誰?」

「あぁ、従兄弟の雪だよ。雪、挨拶しろ。」

「えっあぁ、初めまして、宮野 雪です。」

雪は驚いたように、ムラサキに挨拶をした。 ムラサキも雪の様子に少し驚いていたが笑いながら挨拶を仕返していた。

「こちらこそ、初めまして。桐原 紫姫です。」

「ちょっシキにぃ!」

雪が俺の服の裾を引っ張ってくる。俺は、膝を追って雪の目線に合わせてやる。

「桐原さんって死んだんじゃないの?」

「生きてるよ。実際に今目の前に居るだろう。」

「だって、シキにぃの言い方じゃあ、死んでるみたいだったから。」

「勘違いさせたんだったら、悪かったな。」


そんなに、死んでいる様に話したつもりは無いのだが、雪にはそう聞こえたらしいので謝っておく。
ムラサキには、俺と雪の会話が聞こえないのか首を傾げながら頭に?マークを浮かべていた。

 フッと右手に持っている花束を思い出して俺は、ムラサキに傍によった。
「これお見舞いの花。」

「わぁ〜ありがと! これなんて言う花?」

「エーデルワイス。」

 あぁ、そう言えば、俺はまだムラサキに言いたいことを言っていないことに気付いた。

「ゴメン、ムラサキ。あの時から全く来れなくて。」

ムラサキに向き合って俺は、コレでもないかというほど、頭を下げた。

「あの時のこと気にして、今まで来なかったの? ウタちゃんって頭良いくせにバカなことあるよねぇ〜」

「なっ! お前、俺は真剣に謝ってるのに・・・」

 ムラサキの言動にムカッときて俺は、頭を上げて講義しようかと思ったが出来なかった。
ムラサキがやわらかに笑いながら泣いていたから。



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