君を想う
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「クリスマスだからっておじさんまけてくれたね。」
「そうだな。理由がいまいち分からないが、得したから良いか。」
「うん? わぁ〜見て見て、ウタちゃん!
雪だよ。ホワイトクリスマスだよ!」
「正確には、ホワイトクリスマス・イブな。」
道理で、寒いわけだ。
ムラサキは雪に夢中で俺のツッコミは聞いていないようだった。
空を見上げながら、クルクルとムラサキは回っていた。あの調子じゃあいつかは、絶対こけるから、俺はムラサキの動きを止めた。
「ムラサキ、歩くんだったら下見て歩け、雪見るんだったら、止まってみろ。」
「はーい。でも、初めてだよ。ホワイトクリスマスなんて。」
本当に、さっきの俺のツッコミは聞いていないらしい。もう、訂正するのもめんどくさくなったので何も言わないでおく。
「そうだな。寒いからさっさとコンビニ行って戻るぞ。」
「あっ待ってよぉ〜」
俺は、そう言って走り出した。
ムラサキも走って追いかけるが、男と女の歩幅の違いからか一向に距離が縮まらないので、俺は少しゆっくり走ることにした。
「もぉ〜ウタちゃん! 速いよぉ〜追いつけないじゃん!」
「おぉ、頑張れ。これでも、さっきよりは、スピード落としてるぞ。」
「ウソだぁ〜」
俺は、珍しく声をあげながら笑った。
だから気付かなかったのだ。対向車線で車が猛スピードで走ってくるのに・・・
気付いた時は、その車は、俺が居るわき道に入ろうとしてカーブした時だった。
俺には、その時光景がスローモーションに見えた。頭が真っ白になって動けなかった。
「ウタちゃん!」
ムラサキの声が聞こえたと思ったら、俺は地面に倒れていた。
周りを見てみたら、わき道を渡ったところだと気付いて後ろを見てみたら、ムラサキがもっていた絵の具が散らばって居てその先を目で追ってみたら、白のコートが真っ赤に染まって倒れているムラサキを見つけすぐに駆け寄った。
「ム、ラ、サキ? なん、で? お前が倒れてるんだよ? だってそこにさっきまで立ってたの、俺だ、ろ? なぁ、ムラサキ?」
俺が問いかけても、いつもの能天気な声の返事が聞こえず、ピクリとも動かなかった。
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