君を想う

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 今日は、雪との約束の日だった。

もうそろそろ雪が来るだろう。そう思ったら玄関からバタバタと騒々しい音が聞こえてきた。

「シキにぃ来たよ。話してよね!」

「来たか。じゃあ、お前の家行くぞ。」

「はぁ! 何で?」

驚いても仕方ないだろう。
やっと話してくれると思ったらいきなり自分の家に逆戻りなんだから。
 
 それが雪には納得できないようでギャーギャーわめいていたが、無視して雪を荷物のように肩で担いで連行した。

一歩間違えば誘拐犯に間違われるだろうが、雪と俺の家はそんなに離れていないので、近所の人には見られなかった。

「こんばんは〜」

「あら、久しぶりねぇ〜詩祈くん。」

玄関を開けてすぐに会ったのが、雪の母親の春乃さんだ。
 息子が肩担ぎされているのに、全く動じずにおっとりとした雰囲気で対処している。

「お久しぶりです。しばらく、雪と車貸してくれませんか?」

「あら、急ねぇ〜でも、良いわよ。あんまり、遅くならないでねぇ〜」

そう言って、春乃さんは、車の鍵を貸してくれた。最後まで雪の事には突っ込まなかった。
 車に乗ってから雪は不機嫌だった。

「シキにぃは、乱暴なんだよ。それに、お母さんもお母さんだよ。息子が肩担ぎされてるんだから少しは心配してくれもいいと思うのに・・・」

「悪かったな。いきなり連れ出して・・・」

雪は、ブツブツ言っていたのをやめ俺の方を見た。
 内心では、生意気でも母親に甘えているガキだと安心もしていた。そのおかけで、焦っていた俺の心境も少し落ち着いた。

「で、シキにぃ、どこ行くの? 桐原さんの話はどうなったの?」

「ムラサキの話は今から話す。いま向かっているのは、ムラサキのとこだよ。」

チラリと雪を見たらただでさえ、大きい目がこぼれんばかりに見開いていた。

「なん、で、桐原さんのとこ?」

「お前に話すことを決めたら、会いに行かないと行けないような気がしてな。」

「だったら、ボクが一緒に行く意味無いでしょ!?」

雪は、本当に混乱してるのかいつもの冷静さがかけていた。
 まぁ、無理も無いだろう。今まで話しか聞いていなかった人にいきなり会うのだからな。

「お前には、見届けてほしいんだよ。ちゃんと俺がアイツを会えるのかを見届けてほしい。もし怖くなっても、お前が居れば俺は逃げられないだろう?」

「シキにぃが怖がるなんて、珍しいね。」

雪にとって、俺は何だと思われてるんだか? 俺も人の子だと言うことをコイツは忘れているんじゃないだろうか?

「俺だって、怖がる事だってあるさ。」

「ふ〜ん、それより。桐原さんの話してよ。」

「あぁ、分かったよ。」

これから、雪に話す話は、俺が過去に囚われ、逃げだした話しだ。
 俺は、真っ直ぐと前を見てゆっくりと感情を抑えながら語りだした。



 

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