君を想う
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シーンと静まり返った美術室にはもう俺とムラサキしか居なかった。
他の部員は家で仕上げると言って帰って者、クラスの手伝いで来ない者と居て俺たちはどっちにも属さない分類だった。
俺たちは黙々と作品を仕上げて居た。
ムラサキが沈黙を破るまで・・
「あぁ、終わらない! イメージがわかない、お腹減った!」
「うるさいぞ、ムラサキ。沈んでく花嫁はどうした? 腹減ったならコンビニ行ってなんか買って来い。ついでに、俺のもなんか買って来い。」
ムラサキは、描いているときは静かだ。
こちらが話しかけるのも躊躇するほどの集中力だが、作品に行き詰ると、駄々っ子になる。
「花嫁は、イメージできてるのに、血の滲みとレースの表現ができないの! コンビニでなんか買うお金ない!」
「あっそ。」
「ウタちゃん、冷たい!」
「うるさい、俺も切羽詰ってるんだ! 今日中に完璧に仕上げないと行けないんだからな。」
本当だったら、今日細かい修正をするはずだったが、昨日、部活に行こうとしたらクラスに引っ張り出されて全くと言って良いほど、進められなかったから今日中に仕上げないといけない。
「うぅ〜ウタちゃんが怒ったぁ〜」
「だぁ、うるせーな! これ、終わったらコンビニなんか奢ってやるから黙っとけ!」
「えっ、ホントーじゃあ、アタシも早く仕上げよぉーっと」
そう言って、ムラサキは自分のバックの方に上機嫌で行った。
本当に、現金なやつだ。さっきまでの不機嫌はどうした。
俺は、ムラサキに見つからない様に一つため息をついた。
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