君を想う

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 遠くから入学式が始まった音が聞こえる。俺は、その音がする方をチラリと視線をやってすぐに戻した。
こんないい天気に室内で来賓やら校長の長い話を聞くなんてご苦労なことだ。
 今年の桜は、例年より早くに咲いたから散るのが少しばかり早いらしい。
実際に桜の木の根元で寝転んで上を眺めたら、ヒラヒラと薄紅色の花びらが儚く舞っていた。それをボーっと眺めながら次の作品を考えていた。
 桜の根元にナイフ突き刺した女子高校生が居てその血を吸って花びらが染まってるって言うのもベタだけど良いかもいなぁ〜とか思ってゆっくり目を閉じた。
そしたら、声が聞こえてきた。

「そこの人、退いてぇー」

意味が分からず、目を開いたら茶髪の女が降って来て俺の上に乗って来た。

「ガハァ!」

「あぁ、ごめんなさぁい。でも、アタシ退いて言ったのに・・・」

乗って来た女は俺の上に乗って弁解じゃない、弁解をしている。

「いきなり退いてと言っていきなり退けるわけねぇ〜だろ。つーか、重いから退け。」

「むっ女の子に重いは無いと重いまぁ〜す。」

そう言って女は、俺の上から退いた。

「本当にごめんなさい。お詫びに何か奢るからクラスと名前教えてくれない?」

実際、そう言ったことはめんどくさいから当たり触り無いように断っておくこしたこは無い。

「別に良い、俺もあそこで寝転がってたのが悪いんだし。」

「それじゃあ、アタシが嫌なの。」

しつこいので付きまとわれるのが仕方ないから教えることにした。

「シキ、織部 詩祈。詩を祈ると書いて、詩祈。クラスは1-2。」

「えっ織部 詩祈ってもしかして、絵とか描いてる?」

「描いてるけど、それがなに?」

俺が、絵を描いてるといったら女はかなり驚いていた。 俺の絵でも展示会で見た奴かそうだったら、ウザイな。

「わぁーすごい、同い年だとは聞いていたけど、まさか同じ高校だったなんてすっごい奇跡的だぁ〜アタシね貴方の絵のファンなの!」

ほら、やっぱり。
あぁ、めんどくさいな。
俺の絵のファンとか言っているやつは、危ないやつが多い。
一部のファンはストーカーとなって、髪の毛とか血がベットリと付いて切り刻まれた死体のカラスなんか送ってきたファンも居る。
 確かに、俺の絵は、狂気的なものだがそんなもの送ってきても、嬉しくも何とも無い。なぜなら、俺のモットーは死体は美しくが第一だからだ。切り刻みなんて俺の美学に反するものだから、そのカラスはそのファンに送り返した。

「おーい、話聞いてる?」

どうやら、俺が考え事をしている間でも女は話していたらしい。

「聞いていない。」

「ひっどーい、まぁ、良いや。あっまだ、アタシの名前言ってなかったね。アタシは、桐原 紫姫だよ。紫の姫と書いて紫姫だよ。織部くんと同じ名前だね。」

「桐、原 紫姫・・」

「そうだよぉ〜」

 俺は、この名前に覚えがあった。
最初に知ったのは、小学生の時に見に行った展示会で一番印象に残った絵の作者の名前が桐原 紫姫だった。
 調べたら俺と同い年だと言う事が分かった。それから、何度もコンクールや展示会で見かけた。
 でも、こんなバカっぽい女があんな絵を描けるのか? 嫌でも、紫の姫と書いてシキと呼び名は、そんなに居ないだろう。聞いてみるか・・

「お前、小学校の頃に深紅の着物着た女が死んだ男を抱きしめている絵描いたことあるか?」

「わぁ〜そんな、昔の絵の事も知ってくれたの? 憧れの人に知ってもらえてるとは、すっごく光栄だね。」

あぁ、この女は、あの絵を描いた本人だと今度は本当にそう思った。
なぜなら、普通そんな話をしたら、笑いながらそんな話はしないだろう。



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