君を想う

□プロローグ
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「ねぇ、シキにぃそれ、アルバムでしょ? ボク、見たいなぁ〜」

雪はそう言って、俺の足にすがりついた。
どうやら、見せないと放してくれないだろう。
仕方ないから俺は、ソファーに移動して雪を隣に座らせ見えるように、アルバムを開いた。

「わぁ〜これシキにぃが学生のときの写真?」

「あぁ、そうだな。高校生ぐらいか?」

こうして見ると、不思議な気分だ。
写真の中、俺は確かに高校生で記憶にあるのに写真で見るとその記憶が違ってくる様に思えてくる。

「ねぇ〜シキにぃ? この女の人さっきから写っているけど、仲良かったの?」

「えっあぁ、コイツか、そうだな。仲が良かったといえば良かったな。」

さっきの不思議な感覚の正体が分かった。
雪が指さしている女の能天気さが写真の中では表現されていないからだ。

「なにそのビミョーな答え。でも、シキにぃはこの女の人が大切だったんだね。」

「はぁ? 何でそんな答えになるんだ?」

「えっだって、シキにぃこの女の人の写真、見たらすっごくやわらかい笑顔だったよ?」

雪はいつもの小生意気な笑いじゃなく、純粋な笑顔で言ってくる。
しかし、雪の言うように俺はそんなに柔らかい笑顔で言ったつもりはないのだが、ここで否定をしてもうるさいだけだから肯定をしておこう。

「ある意味では、大切だな。」

「やっぱり、そうなんだ。あっ此処に書いてあるのこの女の人の名前だよね? えっと、きり原、むらさきひめ?」

「違う、苗字は合っているが、むらさき姫じゃなくて、シキだ。桐原 紫姫だ。」

久しぶりに、この名前を口に出した。変な感覚だ。昔は、嫌というほど呼ばされていたというのに・・・

「えっじゃあ、シキにぃと同じ名前だね。」

「名前だけじゃないぞ、コイツは俺と同じで画家だ。」

「へぇ〜そうなんだ。ねぇ、シキにぃこの人じゃないや、えぇっと桐原さんとシキにぃのお話聞かせて!!」

「あぁ、めんどくせー俺は、徹夜続きだったから寝るの! ガキは外で友達と遊んでろ。」

「えぇ〜シキにぃのケチ!」

「だぁーうるせぇな! 聞きたければ、明日来ればいいだろが!」

あっいま俺スッゲー余計なこと言ったな。雪の顔がスッゲー輝いてる。
あぁ、俺って続々そんな性格してるなぁ〜

「本当に、じゃあ、もう帰るね! 明日かならずお話聞かせてね!」

そう言って、雪は清々しいほどの笑みを浮かべ帰っていった。
はぁ〜アイツのことを少しでも話すと疲れる。
それに、雪はどことなくアイツ、ムラサキに似ているせいか余計に疲れる。

あぁ、もう体だけじゃなくて、脳も悲鳴をあげているからいい加減、寝よう。



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