心霊探偵 八雲

□思いを告げる
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 今日は朝からうるさかった。
街に出ればクリスマス一色だったからだ。

 いつもだったら、イベント事にうるさいアイツが騒ぐはずなのに、ここしばらく見ていなかったから、全く気付かなかった。

・・・別に会う約束をしてるわけではないから気にする必要ない。
アイツはぼくと違って人脈が広いからそれなりの付き合いがある。だから、気にすることはない。

・・・なぜ僕はこんなにもアイツのことを考えてるのだろう。
 僕はその答えが分からなかった。心の中がモヤモヤしてなぜだかすごくイラついた。

ガチャ
「やぁ! 久しぶりだね。八雲くん」
「君はもし僕が着替え中だったらどうするつもりだったんだ」

僕の皮肉は、どんなにほかのことを考えていて即座に出るらしい。

「うっじ、実際には着替えてなかったんだからいいでしょ!」
「だから、僕はもしと言ったんだ。ついに耳も悪くなったか?」
「耳もって何よ!」

アイツはいつものように現れていつものように会話をする。昨日も来ていた様に会話をしてこの部屋に馴染んでいた。

「それにしても、こんなに寒い部屋によく居やれるね」

 アイツは僕より厚着をしているくせに腕をさすって寒いと言っている。
 まぁ実際にこの部屋はすごく寒い。だが、コイツが来て温かくなったのは僕の勘違いだろう。

「君は馬鹿か? いや、馬鹿だったな。平気なわけないだろう」
「なっ失礼な! だったら、温かくすればいいでしょ!」
「そうだな。じゃあ、君で温めて貰おうか」
「はぁ!?」

 僕は寒さでおかしくなったらしい。
でも、そんな事は気にしない。さっきの答えが分かった。
 僕は寂しかったんだろう。コイツいや晴香が来なくて・・・

晴香は、さっき僕が言ったことを理解して顔を真っ赤にして口をパクパクさせていた。

「八雲くん・・・なに、言って・・・」

 僕は晴香の言葉をさえぎって抱きしめた。
懐かしい香りがした。つい最近までこの部屋にはあった香りだ。

「君が、しばらくこの部屋に来なくなって分かったことがある」
「ふぇ?」

僕がいきなり言い始めたことに驚いたのか首をかしげながら見上げてくる。

「僕は君が好きだ・・・」
「・・・・・・」

 晴香が目を見開いたと思ったら一筋の涙が流れた。
 あぁ、僕は馬鹿だ。こんなにも心地よかった場所を自分から壊すなんて・・・
 僕はそっと抱きしめていた腕をゆっくり解こうとしたら、言葉が聞こえた。

「嘘・・・うれしい」
「えっ?」

 僕は晴香を見たら、彼女は泣いていた。だが笑っていた。
いつもの太陽の様な笑顔ではなく花が咲くような笑顔で今まで見た中で一番輝いていた顔だった。

「私も八雲くんのこと好きだよ」

僕は柄にもなく固まった。
そんな僕を見て何を焦ったのかいきなり話し始めた。

「あのね、しばらくこれなかったのはプレゼントの・・・」
「もう、黙れ」

僕は晴香の口を僕のそれでふさいだ。
僕はやられっぱなしは主義じゃないんだ。

僕は、耳元に口を近づけ滅多に言わない彼女の名前を呼んで囁いた。












「愛してる、晴香」


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