恋愛小説 『ずっと…』

□【PROLOGUE】
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懐かしい公園、懐かしい景色、全てがあの頃のままだった。
たった一つだけ違うのは、隣にあいつが居ないコト…。
“またこの公園へ来る”って約束したのに…考えても仕方のないコトだ。

色の剥がれかけたブランコの横で走り回る子供達が、一瞬こっちを向いて笑顔を浮かべた。
あの日とまったく同じ光景に、自然と涙が込み上げてくる。
昔と変わらない公園のベンチに腰をかけようとしたが、隣のベンチで幸せそうに笑い合うカップルが居たいので無意識に座るのをやめていた。

ふと聞こえてくる歌が懐かしくて、たまらない。
世界中のどこを探しても居ないあいつに伝えたいコトが沢山あったが、素直になれなかった自分に後悔して、悔しくて、苦しくて、辛くて…どうしようもなかった。

ただ……会いたい……。

もうあいつからの連絡もない携帯電話を握り締めた。
あいつの番号、メアド、全て残っている。
忘れようとして、何度も消そうとしたケド、結局消せなかった。

“あの日、あいつに出逢ってなければ、こんな想いをするコトは無かったのだろうか…。”
そんなコトを思いながら、目の前の桜の木に目をやった。

初めて逢ったあの日…。
今日と同じ様に花の咲き誇った桜の木を、あいつは悲しげな表情で見つめていた。

「あの…大丈夫?」

輝夜が話しかけた時のあいつの戸惑った顔も覚えている。
今の輝夜はきっと、あの時のあいつと同じ状態…。

『あの…大丈夫ですか?』

桜の木をじっと見つめ、涙をこらえていた輝夜は一瞬戸惑った。
懐かしいあいつの声が耳元で聞こえたのだ。

「三浦!!」

思わず抱きつく輝夜。
金色でワックスのせいか少し固く湿った髪、低めの声、整った鼻、大きな目、耳のピアスまで全てがあいつにそっくりの男の子が目の前に立っている。
けれど、その子があいつじゃないというコトはすぐに分かった。

『え…?』

きょとんとした顔、輝夜は腰にまわしていた手を急いで放した。

「………。」

しばらくの沈黙の後、ずっと黙っていた男の子が口を開いた。

『あの…もしかして伊藤輝夜さん?』

一瞬その言葉に耳を疑った。
呆然としたまま首を縦に振る。
男の子は急に笑顔になると、輝夜をおもいっきり抱きしめた。

『会えて…良かった。』


“ありがとう、傍にいてくれて。
離れても、もう傍にいれなくても、誰よりあなたを愛してる…”


あの時からずっと止まっていた歯車が、今動き出す。


ずっと、ずっと…一緒だって信じていたよ。


そう、ずっと……。
 

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