イナズマ文2

□桜花爛漫
1ページ/1ページ

・拓人目線
・拓蘭っぽいけど蘭拓
・春







桜花爛漫






桜の咲く季節。

辺りはすっかり桃色に染まって、春の訪れを主張する。

手をつないで桜並木を歩く、二人。



いま、俺たちに会話はない。

特に会話を交わさずとも、霧野とはなんだが心で繋がっているような気がする。

暖かい陽射しと穏やかな風に優しく包みこまれ、酷く気持ちがいい。


「ふぁ……」

欠伸をする、霧野。

「眠いのか?」

「いや、あったかいからさぁ」

「そうだな」

俺はくすっと笑う。
本当に眠気を誘うほど気持ちのいい日だ。




二人でゆったり歩きながら、俺は自然の織り成す音に耳を傾けていた。

幸い人通りはほとんどなく、風の音が、鳥の声が、いっそう美しく聞こえる。

爽やかな風にさらわれた花びらが、ワルツのように空を舞う。

鳥たちがワルツの主旋律をさえずっている。

吹き抜ける風の音や、小さな草葉がさわさわ揺れる音までもが、全てが綺麗に調和した、円舞曲。

春のメロディーが奏でられて、俺はふいに指揮棒を振りたくなる。




そのとき、



−−−突然、ぶわっと強い風が吹く





「うわっ、すげ−風」

「っ!」

「…!大丈夫か、神童」

砂埃が巻き上がって目にしみる。目を抑えた俺を心配した霧野は、顔を覗き込むように俺を見た。

「ああ、平気だ。ありがとう」


乱れてしまったメロディー。
あまり頂けないな…








ふいに桜の木を見上げると、さっきまでとは見違える程ごっそりと花びらを落とされていた。





………。






なんだか急に悲しい気持ちに襲われる。






……儚い







「神童?」

俺の様子がおかしいことに気づいたのか、はたまた俺の目から勝手に涙が溢れていたのだろうか、霧野が少し慌てながら俺の名を呼んだ。




「おい神童、どした」

「………」

俯いていると霧野が悲しそうな顔をしたので、俺は口を開いた。




「桜って、儚いんだな」

「どうした…急に」


それほどたいしたことではなかったからか、霧野はほっとした様子で優しく笑う。

そして少し考えるそぶりを見せてから口を開いた。



「あのな、神童」




眩しそうに空を仰ぐと、続けて言った。





「桜は来年も再来年も、ずっと同じ場所でまた花を咲かせるんだよ!」






−−−だから、大丈夫



そして俺の頭に手をおいてにっこり笑った。


そう言ったアイツは桜よりも優美な笑顔で、

髪の毛のピンク色は、パステルカラーの淡い色をした桜よりもより一層濃くて、


…儚くなんかなくて。

なんだかとても安心した。

綺麗だ。









桜の花びらが、ひらひら舞って。

愛しい想いも、ひらひら溢れて。



花びらを落とした木々は新芽を芽吹き、時を重ねながら立派になっていくのだ。



「だろ?神童」

「そっか、そうだな!」

そう言って二人で微笑む。






桜が綺麗で、

あったかい天気で、

大好きな人が隣にいて、


なんて幸せなんだろう。


花弁を落とされた桜を見ると、悲しげな表情なんか全然なくてむしろ誇らしげに見えた。




「ほら、もう行くぞ」

「ああ。……な、霧野」

「何?」

「…ありがと」

「神童のバーカ」


つまりは一人で抱えこんで悩むな、という意味だろう。



「来年咲く桜も、霧野と一緒に見たいなあ」

「もちろんおとも致します、神サマ」

「霧野ってなんか桜みたいだな」

「髪の色のことか?」

「まあ、そんな感じ」



霧野が、再び俺の手をとる。



「…春だけじゃなくてさ」

「うん」

「一年中隣にいてやるよ!」

「…うん」




俺たちは繋いだ手にさらに力を込めて歩き出す。


それは、あたたかな小春日和のある日のこと。






-fin-





-----



桜を見て、色々考えちゃう拓人くんのお話でした!

蘭拓初書きです…!
シリアス系統なのにキャラ崩壊してる気がする。

ちなみにいま夏なんですけど、ってツッコミは無しで!!



なんで春なのかというと、春に考えたネタを消化したかったからと、急に「桜」って言葉を多用したい衝動にかられたからです。厨二病かな…

"蘭丸の存在が俺にとっての桜だよ…"ってくだりを入れたかったけど、完全に拓蘭になるので止めました


ここまでご覧くださって
ありがとうございました(^O^)

※8/9 ちょっと手直し




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ