イナズマ文

□プロローグ
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*プロローグ*


―雷門中学校での生活が終わり、


憧れの高校生活はすぐ目の前!




…というか明日が高校の入学式だ






「う〜、早く高校行きた〜い!!」

ソファに寝転がりながら思いっ切り叫ぶ。


"早く明日にならないかな"と、今日は何度つぶやいただろうか。





友達はできるかなぁ…?

勉強とか、難しくなるんだよね。

部活は何に入ろう?




そんなことを考えながら、自宅で春休み最終日を悠々と過ごす少女。







彼女の名前は、風丸一華。

この物語のヒロインである。


もっとも彼女は、まさか自分がこのお話のヒロインだなんて、知りもしないが。





少女は、ソファから起き上がり、高ぶる感情を抑えきれずにそのままベッドにダイブする。



―ばふっ



―ガッ


どうも勢いが良すぎたようで
枕元の電気スタンドが思いっきり倒れてタンスにぶつかり、派手な音を立てた。




「あぶな…っ!」





すると、タンスの上にあったらしい何かが、衝撃を受けて落ちてきた。


トサ、と控えめな音がたつ。







落ちてきたのは……



箱?




降りかかってきた塵ぼこりを手ではらいながら、少女は怪訝な顔でその箱を見つめる。






なにこれ…

見覚えがないけど…




しかし、自分の部屋に保管してあったのだから、やはり自分のものなのだろう。



箱は完全に密封してあり、どうやら開けてみなければ中身は分からないようだ。



少女はティッシュペーパーで箱の表面のほこりを拭うと、慎重に開封する。




箱からは年を経た古くさい紙の香りとともに、幼稚園のときに気に入っていた、絵本。




「うわ…、懐かし!でもなんでこんなもの…?」




確かにこの絵本は幼稚園のころのお気に入りだった。


でも、箱に入れてとっておくほど、大事なものだったっけ?









この絵本を大事に保管しておいた理由が、わからない。思い出せない。





う〜ん、わたし…

なんだかすごく大切な思い出を
忘れているような気がする…









ふかふかのベッドの上で、目を閉じながら、風丸は幼稚園のころを思い出していた。





−そういえば、わたしが幼稚園に通っていたころ、
特別仲の良い男の子がいたっけな。





いつも元気で、明るくて、、

太陽の様な笑顔で。



休み時間にはいつも一緒に外でサッカーをしていた。


サッカーが大好きな彼。




七夕になると、
私達2人が織り姫と彦星みたいだって、
幼稚園じゅうの皆に持て囃されたっけ。





そんなあなたは…、


あなたは…



あなたの名前は、









誰、だったっけ…?



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