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「ヒ、ヒロさん!!」
今年もやってきた猛暑の季節。
黙っているだけでも暑いのに、野分は着替えて部屋から出てきた弘樹に大声を出す。
「んだよ、朝っぱらから。」
野分の言葉など無視し、パタパタと手で扇ぐ。
あまりの暑さに背中に汗が滲む。
野分は早足に近付いてきたかと思うと、扇ぐ弘樹の手を掴む。
合わせた目はとても真剣で、何かしたかと過去の記憶を探るが、次の言葉に弘樹は心底呆れた。
「ヒロさんっ!なんで中に何も着てないんですか!?」
「いや、暑いし・・」
「暑いなら尚更ですよ!!汗かいたらシャツが張り付くじゃないですか!」
「そんなもん当たり前だろ?」
「だからっシャツが張り付いたらヒロさんの可愛いチ◯◯(効果音:ピー)が透けて見えるじゃないですか!!」
「なっ!?」
(こいつの頭は暑さでやられたのか?)
「いいですか?ヒロさんのチ◯◯を見ていいのは俺だけですよ!?」
野分のマシンガントークは弘樹の鉄拳を出すひまを与えない。
「それともヒロさんは、俺以外の人にチ◯◯を見せたくてそんな格好をしてるんですか?」
「そんなわけ…」
「それに…!ヒロさんのそんな煽情的な姿をみて欲情する輩が出てきたらどうするんですか?」
そんな変態はお前だけだ!という叫びが引っ込んだ代わりに、無言で野分の頭を殴る。
(なんて、恥ずかしい奴なんだ…)
顔から吹き出す熱に全身汗だくになる。
野分を見る事が出来ず、そのまま逃げるように部屋に戻る。
「ばか野分…」
部屋で呟いた言葉は、どこか照れたような嬉しそうな響きを持っていた。
「これでいいだろっ!!」
部屋から出てきた弘樹に野分はにっこり笑い、引き寄せる。
「ありがとうございます。」
そう言った顔はとても嬉しそうで幸せそうだった。
(あぁ…俺はこの顔を見る為なら何だってしてしまうのだろうな…)
そこまで思って自分の考えに苦笑する。
結局自分は、いつまで経っても野分に甘いのだ。
愛は猛暑より熱く...end