純情エゴイスト

□伸ばした手の先は…
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パチリと目を開けると目の前は真っ暗だった。

体を起こすと、ギシリと音を立てたベッドが寝室だと言う事を教えてくれる。

時計を見ると、まだ3時。

日の出には明らかに早過ぎる。

こんな時間に目が覚めたのは、さっきの夢のせいだろうか。

徐々に暗闇に慣れた目で自分の手を握る。

(この手は、いったい何を掴むのだろう…)

不安が襲う。

こんな時に恋しくなるのは、恋人の存在だ。

実際、数時間前まではこのベッドで愛を深めていたのだが…隣にあるのは微かな温もりとアイツの臭いだけ。

その場所に顔を埋めるようにして丸くなる。

アイツの臭いが染み付けばいいのに、と馬鹿な考えを浮かべながら二度目の眠りにつく。

微かなアイツの温もりと臭いに抱かれて。


今度は、伸ばした手がアイツを掴みますように…と雲を掴むような願いをした。



遠くから響く機械音に意識が浮上する。

静かに目を開けるとカーテンのすき間からもれる光が眩しかった。

怠い意識をムリヤリ起動させる。

軽く痛む関節に力を入れて体を起こす。

ちらりと見た時計は、目覚ましのアラームから30分は過ぎている。

今からだと準備しているうちに家を出る時間になる。

お腹もあまり空いた感じがしないから、抜いても大丈夫だろう。

まだ寝ぼけているのか、急ぐという気持ちがない。

むしろ、ひとつひとつの動作がいつもより遅い。

迫る時間に押されながら大学へと向かった。



 
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