純情エゴイスト

□心と体
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野分との別れから、10ヶ月が経とうとしていた。
あれから弘樹は真貴との爛れた生活を送っていた。いつか飽きるだろうと。いつか捨てられるだろうと期待していたのだが、真貴は10ヶ月経った今でも変わらずに弘樹を求めてきた。
最初こそ部屋から出されずに、抱かれ潰される毎日だっが、少しすると自分の秘書として外に出してくれた。
そのおかげもあってか、精神崩壊とはまではいかなかった。
だが、どこかで気持ちと身体のずれに違和感を感じる瞬間があった。そんな時、どうしようもなく気持ちが落ち着かなくなる。
自分の存在意義があやふやになり、足元がガタガタと崩れるような感覚が襲う。
息は荒くなり、身体が震える。
その度に野分の笑顔を思い出す。
(あいつの為だ。あいつの幸せの為なんだ。)
震える身体を押さえ込んで耐えていた。
それでも落ち着かない時には、リストカットをする。
赤く流れる血をみて、生きていると実感する。
死んでいない事の確認だ。
最初真貴に見つかった時には、張り飛ばされ、お前が死んだらお前の大切なやつが死ぬと思えと脅された。
だから、確認したくなるのだ。自分が生きているということを。
弘樹の症状は日に日に悪化していた。
それは近くにいた真貴が一番分かっていた。

「おい弘樹、気持ちいいか。」
以前より痩せて細くなった身体は、白く病的だ。
真貴に揺さぶれる身体は、汗を滴らせている。結合部はぐちゅぐちゅといやらしい音をたて、中は食いつかんばかりに収縮している。
乳首も赤く色づき、硬く尖っている。これだけならば、真貴の望んだ身体だ。
だが、弘樹の顔からは表情が抜け落ちたよあだった。声が出ない訳ではない。
喘げといえば喘ぐ。強請れといえば、いやらしく強請ってくる。
だがそれは真貴の命令でしか紡がれなくなってしまった。
今回も真貴の問いかけに
「気持ちいい、いいよ、っ!い、いきそっ!!ぁ、ぁ、あっ!!」
といやらしく返してくる。
これでは、人形を抱いているのと変わらない。
それでも真貴は、弘樹を手放せなかった。中毒の如く、弘樹の身体にしか興味がなくなってしまったのだ。

弘樹の中に熱い精子を注ぎ、己の欲望を取り出す。そうして、服を着ると弘樹にも服を投げる。
「弘樹、服をきろ。お前に見せたいものがある。」

服をきた弘樹がリビングに行くと真貴ともうひとりいた。
女性にしては、高めの身長は、モデルのようにすらっとしている。
長く綺麗な黒髪を靡かせた女をみると、弘樹は吐き気がこみあげてきた。

その女は、弘樹が年末に媚薬やら怪しげな薬やらを投与されていた時に、プレイの一環として抱かされた女だ。
媚薬で全身敏感でおかしくなった身体。後ろの穴は真貴の大きなペニスによって塞がれ、すでに一回出された中は卑屈な音を立てている。
弘樹のペニスは、根本を縛られ、いきたくてもいかせてもらえなかった。
後ろからの刺激で、頭の中は、出す事しか考えられない。触られるところ全てが気持ちいいのだ。
そんな頭では、いつのまにか入ってきていた女性なんか気にする余裕はなかった。
気付いたら、背面坐位の体勢にさせられ、弘樹のペニスを温かい肉壁が包んでいた。
それと同時に柔らかい身体を押し付けられていた。
女は弘樹の上で淫らに腰を振った。弘樹に女を抱いているなんて思考はない。
ただペニスが気持ちよくて、早く出したくてたまらなかった。
穴の入り口をひくひくさせ、中をうねらせ、真貴に許しをこう。
お願いだから、出したいと。
弘樹には、目の前に起こっている状況なんて頭で処理できるものではなかった。
真貴には、にやりと笑いながら、弘樹のペニスを縛っている紐を解く。
そして、耳元でささやく。
「たくさん出すんだ、弘樹。」
低い声が頭の中を犯すようで、弘樹はたまらず喘ぎながら逝った。
弘樹が一回出した後も、真貴は攻め続けた。一回出した後の弘樹のペニスは萎えずに硬度を保ったままだ。
これも真貴の投与した薬の影響かもしれない。
真貴に前立腺を刺激されれば、小さくいく。
「あぁ、だめだ。さっき逝ったばかりなのにっ、、、すぐ、出るっ、、!ぁあっ!!」
姿勢を変えられ、女を押し倒すような体勢になる。
真貴にはバックで攻められ、弘樹を通して、女にも真貴の、攻めが伝わる。
深く弘樹の中を抉れば、その衝撃が女にも伝わり、女は膣を締め付ける。
その締め付けに弘樹のペニスはビクビクと震えながらいく。
ただの悪循環でしかなかった。それでも気持ちいい事からは逃げられない。
そうして、弘樹は精巣が空っぽになるまで女の中に出し続けた。
長時間の交わりの中でふと、意識が鮮明になる瞬間が何回かある。その瞬間、今の現状に理解が、追いつかず嫌悪や恐怖から身体が芯から冷えるのだが、真貴はそれを見逃さずに弘樹を快楽の波へと流していく。

よって弘樹にとって目の前の女は、気分の悪くなる対象でしかない。
女は真貴にあるものを手渡した。受け取った真貴は、それを弘樹へと持ってくる。
弘樹は、目の前に運ばれてくる正体をみて、足が震えた。
それはまだ生まれて間もないであろう赤子だった。
「それはお前の子だ、弘樹。お前が育てろ。」
真貴の言葉に、弘樹は目に見えて狼狽えた。
たとえ、あの悪夢の時にできた子供だとして、自分に子育てなどできる訳がない。
「あんたは、いいのか。お腹痛めて産んだ子供だろ。」
初めて女に向けて発した言葉だった。
名前も知らない女との子供。絶望しかない。そして、女の言葉に期待した。連れて帰ると言ってくれと。この環境は、子育てなんかできる場所ではないのだ。
「確かにお腹を痛めて産んだ子だわ。でも、私が欲しかったのは、あなたとの子供じゃないわ。私が欲しいのは、真貴との子供だけよ。それ以外はらいらない。」
あなたの好きにして、そう言い残して女は出て行った。
真貴は、子供を弘樹に渡した。
「名前を、決めろ。役所に申請する必要がある。検診やら何やらはお前が連れていけ。車はこっちで用意する。とうぶん秘書の仕事は免除だ。
必要なものは、これで揃えろ。外出するのは、構わない。3人くらい見張りがつく。
だが、俺が弘樹を望んだ時に優先するのは、ガキより俺だ。いいな。それができねぇなら、ガキは殺す。」
真貴に渡された赤ちゃんは、とても小さく、軽いはずなのにどこかずっしりと重かった。罪のない子を殺していけないと思った。
(俺がこいつを護らなきゃ、この子は本当に死んでしまう。)
弘樹の目に、力が入る。
それをみて真貴の口角も上がる。
(あぁ、その顔を待っていたんだ。まだまだもがけよ、弘樹。)
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