純情エゴイスト

□心と体
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【それぞれのエゴイスト】




きっと喜ばれない

きっと怒られる

それでもあなたの為に

わがままな僕はエゴイスト



貴方が好きで好きですきで

貴方を中心に動いている日常

貴方の為に生きている僕もエゴイスト



僕たちは純情なエゴイスト




弘樹は、野分を避けるようになった。

返事もそっけなく、必要な事しか話さないようにした。

残された時間で、なんとか野分と別れなければならないからだ。

だが、お互い仕事が忙しい者同士。

弘樹の行動がどこまで効果があったのかはわからない。

結局、別れを切り出せないまま時間がすれ違い、期日になってしまった。

期日の日、弘樹は仕事の帰りに真貴の元を訪れた。

高級マンションの最上階、その部屋のキーが場所のメモと一緒に弘樹のカバンに入っていた。

部屋を訪れた弘樹を真貴は煙草をふかしながら、待ち構えていた。

ゆっくりと真貴へ近づく弘樹の拳は固く握りしめられていた。

真貴の獣のような視線に、足が震える。

真貴の目の前まで来た弘樹は、真貴へすり寄り、ネクタイとシャツのボタンを開ける。

「なぁ。あいつとは、別れたんだ。
だからさ、抱いて?」

自分で言っていて吐き気を催すが、これで騙されてくれるなら、と。

「弘樹。」

優しい呼びかけに、俯いていた顔を上げた瞬間。

バシンッと大きな音が響く。

頬を打たれた弘樹は痛みよりも驚きでいっぱいだった。

「素晴らしい自己犠牲愛だな。弘樹。」

ジンジンと熱を持つ頬に手を当て、ようやく打たれたことに気づく。

「調教が足りなかったか?それとも彼氏の前で犯してやれば良かったか?」

弘樹が唇を噛みしめ、首をふる。

「お前ができないなら、俺がケリをつけてもいいんだぞ。」

弘樹が噛みしめていた唇をほどく。

「この一週間、仕事が忙しくてさ。会う機会がなかったんだ。だからっ」

真貴の射抜くような視線にそこから先の言葉は出なかった。

「そういう事にしておいてやる。」

そういった真貴は、弘樹から視線を外し、新しい煙草に火をつける。

「そうだ、弘樹。お前、仕事辞めろ。」

「は?」

あまりに唐突な言葉に呆けるが、真貴の言葉に冗談はなかった。

「辞めろ。」

「・・・わかった。」

(もう、逆らえない。)


完全に囚われてしまった。


でも、それでも。

心だけは、渡さない。

絶対に屈さない。

決意を固める弘樹を寝室まで引きずり、ベッドへと放る。

優しさなんてない。

だが、身体は真貴の与える快感に満たされていく。

だが、それを認めたくない弘樹は真貴の背中へと爪をたてる。

もう一度打たれるかと思ったが、真貴はニヤつくだけで、弘樹の好きにさせた。

次の日、「抱かれたくなったら、いつでも来い。」そう言って、放された。

今度は、期限なんて言われなかった。

もう言わずとも、弘樹がこの部屋に帰ってくるしかない事を分かっているからだ。

 
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