純情エゴイスト
□心と体
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君は笑うだろうか
ただ一途に想う僕を
消えない想いを大切に抱える僕を
君は泣くだろうか
君の幸せだけを願う僕を
隣で支える事の出来ない僕を
それでも信じて欲しい
君を愛しているこの気持ちを
目を覚ましたら夕方で、見慣れた部屋にそっと息をつく。
ゆっくりと身体を起こし、リビングに向かう。
テレビをつけると、正月スペシャルやらなんやらで…弘樹はそこで新年を迎えていることに気付いた。
真貴に拉致されている間、時間感覚はなく、ただ終わりを待つしかなかった。
ソファーに身体を沈めて、ふと考える。
野分のことだ、一週間も連絡の取れなかった自分を心配して大変な事になっているのではないかと。
だが、部屋には誰も帰ってきた様子がない。
そこでやっと携帯の存在を思い出す。電源を入れて中を確認する。
(あぁ、本当にあいつに抜かりはないんだな。)
そこには、弘樹に代わって野分に連絡が入っていた。
ご丁寧な事に、野分が家に帰らず心配もしないような口実を並べて。
弘樹の両親が中々帰らない息子を心配して部屋に押しかけて来たから、仕事が落ち着くまで部屋には帰るな。そして、部屋に帰る時には必ず連絡をしろ。
という内容をいかにも弘樹が書いたような感じで野分に送っていた。
心優しい野分の事だから、弘樹に気を使ったのだろう。
分かりました、こっちも忙しくて一週間程部屋には帰れないので、ゆっくりして下さい。
というような内容が返ってきている。
真貴の手の回し様には驚いたが、野分に心配をかけたくなかった弘樹としては有難かった。
いや、汚れた自分を知られたくないだけなのかもしれないが。
とりあえず、真貴の口実に合わせて、野分にメールを送る。
親が帰ったから、もう大丈夫だ、と。
後は野分が帰るまでに、部屋の掃除など誤魔化さないといけない事は多い。
だるい身体を動かし作業に取り掛かる。
掃除が一息ついたとこで携帯を確認すると、野分からメールがきていた。
こちらも仕事が落ち着いたので明日には帰れます、と。
それに返事をして、また片付けを再開する。
一週間使わずにいた為、埃っぽかったが、夕方には綺麗にする事が出来た。
それからも大変だった。
方々に新年の挨拶電話を入れ、母親の小言は長引く前に通話を終了させた。