純情エゴイスト
□繋がりは未来へと
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「はい、今日はここまで。宿題はきちんとやってくるよーに!」
黒板の前に立つ弘樹が話し終わると、号令がかかり挨拶をする。
挨拶が終わると子供達が次々に部屋から出て走って行く。
「おーい、きちんと手を洗ってから席につけよ〜!!」
走りゆく大勢の背中に声を張り上げて叫びながら、柔らかく微笑む。
そして、弘樹は反対の方へと足を進める。
「はい、息を吸って下さい。はい、吐いて〜」
野分は、受診して来た子供の体に聴診器をあて、胸や背中の音を聴いていく。
「はい、いいですよ。ただの風邪なので安心して下さい。お薬の方を出しておきます。お大事にどうぞ。」
親子が出て行くと変わりに弘樹が入ってくる。
「あれ?ヒロさん、どうかしましたか?」
「バカ。飯だ、飯。もう、みんな待ってるぞ。」
「もう、そんな時間ですか!?」
驚いた顔をする野分に、いいから早くしろと言いながら弘樹は先に行こうとする。
野分は、弘樹の手を引っ張って引き寄せる。
腰に回った手に弘樹は崩れる体を支えようと、とっさに野分の肩に手をつく。
「ばかっ、いきなり何すんだよ!」
弘樹の怒鳴り声にも笑って返す野分は、さらに弘樹を引き寄せてキスをする。
すぐに顔は紅く染まり、瞳は静かに閉じられた。
名残惜しげに響く音で、甘い時間の終わりを告げる。
「早く行くぞ、ばか!」
ほんのり色づいた首もとを見せ、野分を置いて弘樹は歩いていく。
野分は弘樹の後ろ姿に柔らかく微笑んで後を追う。