純情エゴイスト

□溶けて蕩けてトカして
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寒い、寒い…

雪が?気温が?

違う、違う…

冷たいのは、心。

痛い、痛い…

何も感じない体が。

いくら温もりを求めても、決して手に入れる事は叶わない。

それでも、溢れる気持ちは止められず…

今宵も熱を求めてさまよう。


全てを凍らせるこの体が憎い。

温いその体が恋しい。

誰か、この躯を…この心を…・・・。



「おい兄ちゃん!今から山にのぼるんか!?」

「はい。」

「悪い事は言わんからやめとけ。この山は日が暮れるのが早い。いくら真昼間に出ても山頂の民宿まで行くのは無理だ。」

「はぁ。」

「それにこの山は雪オンナが出ると噂がある。今までに何人も行方がわからん。兄ちゃん、いい男だから雪オンナに捕って喰われるぞ。」

「ご忠告ありがとうございます。でも、明日からは吹雪になるって言ってますし…頑張って登りたいと思います。」

「確かにそうだが…。やっぱりやめといた方がいいぞ。」

村人の最後の忠告に笑顔で答え、黒髪で長身の青年は山に向かった。



雪であやふやな道を辿り山を登る。

中腹まで来た辺りで雲行きが怪しくなってきた。

青年は吹雪で道が見えなくなる前に…と足を急がせる。

だが雲の方が一足早く、雪が降り出した。

青年は雪に足をとられながらも負けずと足を動かす。

辺りも段々暗くなり、雪も吹雪いてきた。

体温と体力を奪われ、足を動かすのが辛い。

ついに足を止めてしまった青年は、近くの木に背を預けて座り込む。

立ち止まっては駄目だと、進まなければと思うが…体が動かない。

危ないと警報が鳴るが、落ちつつある瞼。

ゆっくりと空を仰げば、吹雪いてた雪は止み静かにはらはらと降っていた。

月の光に照らされた雪は光り輝き、青年はその光景に魅入っていた。

キラキラと光る雪は白銀の大地にも降り積もり、それをぼんやりした目で見ていた青年は視線の先に一層眩しい光をみた。

その光に導かれるように、体が動く。

先程までの疲労感や倦怠感など感じさせないくらいしっかりした足取りで光を目指す。


 
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