純情エゴイスト
□素顔に羽衣を被せて
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昔々あるところに、竹を取り様々な用途に使い暮らしていた宮城庸という人がいました。
宮城は、先月奥さんに逃げられたばかりで一人寂しく過ごしていました。
ある日、いつものように竹取りに行った宮城は…竹林の中で光り輝く竹を見つけました。
「なんだ…これは。」
不思議に思った宮城は思いきって竹を割ってみました。
竹が割れると、中には…それはそれはとても可愛らしいことこの上ない赤ん坊がいました。
宮城は赤ん坊のあまりの可愛さに少し呆然とするが、すぐに気を取り直して赤ん坊と割った光る竹を持って家に帰りました。
宮城の家は、とても貧乏でみすぼらしく…あるものといえば父から受け継いだ大量の書物だけです。
家に帰った宮城は、持ち帰った竹を綺麗に洗い、それを街に持って行きました。
赤ん坊の衣服やご飯の足しになればという思いでした。
店の主人は、光る竹を物珍しそうにマジマジと観察します。
あまりに長い時間見ている為、宮城がやっぱり売れないか…と諦めかけた時、店主人が声を上げました。
「これは素晴らしい品物だ!いくらだ?いくら払えばこれを譲ってくれるんだ?」
あまりに急な事態に固まる宮城に店主が痺れを切らします。
「こ、これでどうだ?」
金の詰まった小袋を宮城に渡します。
そのズシリとした重さに宮城はただただ驚くばかりでした。
宮城を反応をどう勘違いしたのか店主は慌て出しました。
「これでは足りぬのか…。な、ならば、これならどうだ?」
そう言ってさらに小袋を二つ宮城に渡します。
宮城は、今ある状況を飲み込むのに精一杯で言葉を出す事が出来ません。
それをまたまた勘違いした店主が次々に小袋を渡していきます。
とうとう最後には袋いっぱいの金を出し「これで、勘弁してくれ〜」と、泣き出してしまいました。
そこでようやく我に返った宮城は、手に溢れんばかりの金に怖じけづきつつ店を後にします。
手に入れたお金を使って服や食べ物を買い赤ん坊の待つ家へと急ぎました。
家に返ると赤ん坊はまだ夢の中のようで静かに眠っています。
「いやぁ、本当に可愛いな…。さて名前だ。んー…女の子でも、やっぱり世の中の事は弘くたくさんのことを知ってもらいたしなー。……にしても姫のように愛らしいし〜。将来、パパって呼んでくれないかな?・・・おっ!弘くたくさんの知識を持つ美しい姫、『弘姫』。よし、これに決定だ。」
名前を決めた宮城は、先程買った服を弘姫に着せようとしました。
弘姫は竹から取り出した時と同じ状態で、とても肌触りの良い綺麗な布を体に巻いています。
それを取ろうすると…弘姫は泣き出し、布をがっしり掴んで離しません。
あまりに泣く弘姫に宮城は困り果て、結局弘姫の好きにさせました。
それからスクスクと大きくなった弘姫は、自分で立てるようになると纏っていた布から宮城が買ってきた服を自分で着るようになりました。
それでも、布は肌身離さず身につけていました。
弘姫はあまり感情を出さない大人しい子でした。
特に笑いもしなければ、怒りもしません。
宮城は不思議に思いましたが、言われた事や教えた事はきちんとこなす飲み込みの良い子だったので内気な子なのかもしれないと気にしませんでした。
瞬く間に三ヶ月の時が経ちました。
宮城も光る竹のおかげで裕福になり、今では豪邸に住むようになりました。
弘姫も妙齢の女性ほどまでに成長しました。
そこで宮城は髪を結い上がる儀式を手配し、裳(十二単を構成する着物のひとつ)を着せました。
裳を着るのをなぜか最後まで渋っていましたが、宮城が泣き落として着るのを承諾させました。
弘姫はこの世のものとは思えない程美しく誰もが魅とれました。
しかし、弘姫は美しいだけでなく、宮城が持っている書物を読み大変な博識者でもありました。