純情エゴイスト

□愛を綴って
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「すげぇー」

男の子に連れられやって来たのは、談話室のようなところ。

日当たりがよくて、テーブルと椅子が置いてある。

壁には季節の飾り付けをしているのだろう。

今は七夕がくるから、天の川や星、彦星と織り姫が可愛く飾られている。

そして、中央にはとても立派な竹が置いてある。

夜になると、壁や天井の天の川や星が光り、とても綺麗なんだと男の子が教えてくれた。

さっき野分と他の子供達がいた部屋は学習ルームで、向こうで書きこっちに飾るようだ。

すでに飾られている短冊を読んでいく。

どれも子供達らしい内容だった。


野菜を食べれるようになる。
仮面ライダーになりたい。
可愛くなれますように。
強くなる。
お金持ちになれますように。
お嫁さんになれますように。


等など。

同じ筆跡があるから一つだけじゃなくたくさん書いているんだろう。

色んな夢があって面白いと思いながら読み進めていく。


カッコよくなりたい。
映画監督になる。
看護師さんになりたい。
先生みたくカッコよくなる。
先生大好き。


後半ちらほら混ざってきた『先生』という言葉。

それに引っ掛かりを覚えながらも読んでいく。


先生より背が高くなりますように。
のわき先生大好き!!
先生カッコいい〜
のわき先生と結婚する!!


所詮、餓鬼の言ってる戯れ事。

そう自分に言いきかせていたが、体は素直なものらしい。

「お兄ちゃん、痛いよっ」

手を繋いでいた男の子が顔をしかめて言った。

「あ!悪ぃ…大丈夫か?ごめんな。」

短冊を見ていくうちに手に力がこもったのだろう。

最初は怒った顔をしていた男の子も頭を撫でてやれば、また笑顔に戻った。

「ね!お兄ちゃんも書こう。」

竹を一回りした所で男の子が、弘樹の袖を引っ張りながら言う。

それに根負けして大人しく男の子が導く机まで移動する。

子供に合わせたテーブルと椅子は弘樹には小さいが我慢して座る。

「はいっどうぞ。」

男の子が持ってきた短冊とペンを弘樹に差し出す。

それを受け取るが…

(何を書けばいいんだ…?)

頭を悩ませる弘樹だった。

「なぁ、野分…先生って人気なの?」

弘樹のように悩むようすもなくペンを走らせる男の子に聞いてみる。

「うん!!みんな先生のこと大好きなんだ。」

えへへ…と笑う顔は純粋で可愛いらしい。

「そっか…先生は優しいか?」

「うん!!優しいしカッコいいよ。注射も痛くないんだ!」

軽く鼻歌を歌いながら話す男の子に弘樹は誇らしくなった。

別に自分の事を言われている訳ではないのだが…自分の恋人を良く言われて悪い気はしない。

「そっかそっかぁ…。野分は本当に優しいからな。でもな、カッコイイだけじゃないんだぞ?たまに犬みたいで可愛いんだ。」

ついつい嬉しくて笑えば、男の子が目をパチクリさせた。

「お兄ちゃんも先生が大好きなんだね!!」

にこやかに言う男の子だが、弘樹は赤面だ。

「………ぅん。」

小さく頷けば、やっぱりなーと言いながら、また短冊に顔を戻す。


 
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