純情エゴイスト
□愛を綴って
1ページ/6ページ
「みんな、書けたかい?」
「あ!先生だ!!せんせ〜」
机の上で短冊にペンを必死で走らせる子供達。
そこに様子を見にきた野分が声をかけると、子供達が次々に野分へと突進してくる。
相変わらず子供達からの人気は絶大な野分。
本人も研修医で忙しいのに、空いた時間には必ず様子を見に来る。
今も、子供達に目線を合わせ、次々に話し出す子供達一人ひとりの話に耳を傾けている。
そんな姿を少し離れた所から見ている弘樹。
野分に頼まれた着替えを持ってきたのだが、なんとなく野分の仕事ぶりを観察しているのだ。
(それにしても…人気だなぁ。あいつも楽しそうだ。)
ついつい表情が柔らかくなる。
そこに鬼の上條の威厳はなく、ふわりと微笑んだ顔は優しかった。
弘樹の優しい顔に引き寄せられたのか一人の男の子が近付いてくる。
弘樹は声をかけられるまで野分に夢中だったので、男の子が近くに来た事に気付かなかった。
「おにぃちゃん!」
くいくいっと服を掴まれて、弘樹はやっと男の子に視線を移す。
「どうした?」
男の子に一瞬驚いたが、きちんと目線を合わせて話す。
その声は、ふわりと微笑んだままの顔と同じく優しかった。
優しく声をかけてくれたのが嬉しかったのか少し照れたように話す。
「今、短冊作ってるんだ。おにぃちゃんも一緒に書こうよっ!」
「え?ちょ、まっ…!!」
思ったより強く引っ張られ、導かれるままに足を動かすしかなかった。