BLACK 銀魂
□BLACK 銀魂 5話
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「オヤジィ。団子と茶ぁ頼むぜ」
「あいよ。ちょいと待ってくれ」
中に入るなり注文をし、外にある食い所を兼ねた長いすに腰掛けた。
「全く、市内見回りってのはホント面倒でいけねぇ。こんな仕事は土方にでもやらせとけってんだ」
やれやれと唸りながら、椅子に手を突いて深く息を吐く。その瞬間、総悟は視界の端に見知った顔を見つけた。
「ん。オイ。こうき」
「あ、沖田さん。まだ仕事中じゃ」
「今山崎の調査待ちでさァ。丁度良いこっちで一緒に食おうや」
「や、でもまだ仕事残ってるんで、今ちょっとお使い頼まれてて」
「誰に?」
「土方さんです」
土方。と言う名前を聞いた途端、総悟の表情は不機嫌なものになり、近づいてきたこうきを無理矢理自分の横に座らせた。
「おやじ。団子と茶ぁ、もう一人前ずつ」
「あ、いや」
「良いから、食ってけ。土方さんには俺から言っといてやるから」
「分かりました。じゃあ」
座り直し、総悟の横に座ったこうき。暫く間が開いた。
二人とも口を利かず、ただ黙っている。
「どうでィ。こっちには馴れたか?」
「はい、来た時よりは」
その笑顔はどこか無理をしているようなそんな気がした。無理もない。聞けば突然、この星に来てしまったという。
突拍子も無い話ではあるが、こうきが嘘を言っているようには見えない。
それが本当の話ならば普通はかなり辛いはずだ。だと言うのに、こうきはそんなに辛いところを見せずに、きちんとこの星で、江戸で生きようとしている。そこは素直に凄いと思える。
「はいよ。お待ち」
「おう。ほらこうき、食いなせェ」
「ありがとうございます」
それからたわいもない世間話をしながら団子を食べ、茶を飲んでいると、やや時間を置いてから、山崎が団子屋に姿を現した。
「あれ? こうきさんも来てたんですか。沖田隊長。一応調べ終わりましたよ」
もう団子も無くなり、ただ、話をしているだけだった二人は入ってきた山崎に一度言葉を止めた。
そして仕事の邪魔になると判断したのだろう。こうきは先に立ち上がる。
「じゃ、そろそろ戻りますね」
そう言い残すとこうきは立ち上がり、団子屋に金を払ってから出て行った。
奢ると言っても良かっただろうが、こうきは簡単に人から奢られるような事を嫌っているのは、何となく分かっていたので、それは止めておいた。
けれどもう一つ。山崎は別だ。
「もうちょっと時間掛けて来いよ。折角休んでたのに」
本心を隠しながら言う。
「だから何でサボるんですか。俺にだけ仕事させて」
「良いから早く報告しろよ」
残った茶をすすりながら、山崎の報告を聞く。
「どうやら、人が少ないのは妙な噂が流行ってるからだそうです」
「噂?」
「ええ、それが今時珍しい話ですが、追い剥ぎらしいんですよ」
「追い剥ぎってあれか。闇討ちして気絶させて金とか持ち物とか奪って仕舞いには服まで盗む奴」
「それです。なんでも相手は女で初め色仕掛けで迫ってくるらしいんですよ。それで油断したところで後ろからバコンってな寸法らしいです」
「色仕掛けねぇ」
引っかかる奴も引っかかる奴だ。と思いながら総悟はお茶を飲み干す。
「人相書きを書こうにも、毎回変装を繰り返して姿形を変えてやってるそうです。それでみんな警戒して外に出なくなったって事らしいですよ」
「そうかい。分かったそれは暫く様子見するしかねぇな。俺ぁはちょっと辺りを見回ってから戻る。山崎ィ。お前はこうきより先に帰って土方の野郎にこうきの使いが遅れた理由説明しとけ」
「沖田隊長と茶飲んでて遅れたって言えば良いんですか?」
いつも通りの間抜け顔で言う山崎に総悟はため息と共に頭を小突いた。
「アホ。そこは何とか上手いこといっとけよ」
「はぁ。何とかやってみます」
ため息混じりにその場から離れていく山崎を見送ってから、総悟も立ち上がり、自分の分の団子代を払って外に出て行った。