BLACK 銀魂

□BLACK 銀魂 4話
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 ここ何日か降ることのなかった雨が朝から降り続いている。いつもより気温が低く雨が冷たくなり時期は11月も終わろうとしていた。


 こうきは、いつもの様に倉庫を整理している。

「寒くないのかィ、こうき」


 傘をさしながら総悟がやって来た。


「大丈夫です……どこかに行くんですか?」


 どこか寂しそうな、こうき。口数も少ない。けして愛想が悪いわけではない。まだまだ、この世界に慣れていないのだろう。


「団子食いに行くついでに、見廻りしてきまさァー」

 軽く微笑むこうき。

 総悟はこうして毎日必ずこうきの顔を見に来る。


「お気をつけて」

「土産、買ってきてやらァ。5時に待ってろィ」


 右手に傘を左手はポケットに入れ屯所を出て行った。


 それから、すぐに土方が来る。


「おい、古城。中から青いファイルを取ってくれ」


 倉庫の手前の方は、片付いてあり、そこは頻繁に使う書類やファイル関係を置くように、こうきがスペースを作っていた。


 棚を整理をしていた、こうきは、小さなハシゴから降りファイルの置いてある場所を見る。


「……黒いファイルしかないです」

「そんな事はねぇ、昨日、確かに置いたはずだ」


 隅までファイルを探すが見つからない。


「やっぱり、ないです」

「まさか捨てちまったんじゃねーだろうな?」


 瞳孔を開き、疑いの目を向けてくる土方。


「……捨ててません」


 アルバイト初日に倉庫の中身は勝手に捨ててはいけないと、山崎から何度も聞かされていた。真選組に世話になっている為、絶対に約束は守っていた。


「ちっ」


舌打ちをして、土方はいなくなった。


 「……」


 急に雨が強く降り出した。こうきは下を向き動こうとしない。


 拳を握り、倉庫の裏側まで走って行きしゃがみ込むと抑えていた涙を流すこうき。


「……帰りたい」


 この世界に来て、全てがなくなったような気がしていた。実際そうなのかもしれない。初めて出会う人達、信頼は時間をかけて築くものとは分かっていても、簡単に流せるものではなかった。まだ馴染めていない現実。中谷との別れ。

 この世界に来て、今まで堪えていた孤独な思いや、悔しさが一気にこうきの小さな心を苦しめる。そして、自分を責め、泣き続けた。



数十分後、泣き止むと気持ちを落ち着かせたこうきは、倉庫の中に戻り仕事を進める。


「お疲れ様です」

 山崎がやってきた。

 手には青いファイル。


「お疲れ様です」

「倉庫の中、どんどん変わってきましたね」

「はい」

「この調子で頑張って下さい」


 山崎は仕事があるため倉庫を後にした。


 棚に置かれた青いファイル。きっと土方が探していた物に違いない、こうきは手に取り倉庫に鍵を閉め、土方の部屋まで向かう。


「すみません」

 土方の部屋の前。

「おぉ、誰だ?」

「古城です」

「……入れ」

「失礼します」


 襖を開けて中に入り、正座するこうき。土方は机で書類を書いていたが、振り向き、あぐらでいる。


「ファイル、見つかりました。片付けしてた時に、別の物と混ざっていたみたいで。申し訳ありませんでした」


 ファイルを渡し、深々と頭を下げるこうき。


「……いやっ、お前……何でもねぇ、仕事に戻れ」

「はい。これからは、気をつきます、失礼します」


 部屋を出て行ったこうき。


 ちょっと前に、山崎がファイルを持ち出し使っていた事が分かった。こうきが犠牲になり山崎を守ろうとしたのだ。


 疑った自分を責めることもできると言う選択もあったのに。


(たいしたヤツだぜ)


 土方は、銀時が何日も居候させている訳がわかった様な気がした。
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