BLACK 銀魂

□BLACK 銀魂 3話
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「なに〜!真撰組で働くっ!?」

「はい、やっぱり働かないと、と思いまして。雑用みたいな感じですけど」

「働くのはいいけどよぉ、真撰組じゃなくてもいいじゃねーか?あそこは、キザなマヨラーはいるは、サディスト王子にゴリラ、チンピラ警察だぞー」

「そんな言い方しなくても。こうきさん大丈夫ですよ、少し変わっていますが、みなさんいい人ですから」

「うん」

「なんかされたら言えよー、銀さんが叩き切ってやるからな」


 軽く微笑むこうき。

 こうきさんがきてから1週間が過ぎた。


銀さんはこうきさんが引込思案で大人しい性格だからか、一週間たった今でも距離を保っているような気がする。いつもなら、初対面の依頼人相手でも失礼なことを言ったり卑猥なことを平気で言うのに。



「頑張って下さいね。そういえば何時間くらい、働くんですか?」

「朝の9時から5時まで」

「そんなにですか?」

「うん」

「体は大丈夫ですか?」

「大丈夫」


 こうきさんは、ここにきてからすぐに風邪を引いて2日間寝込んだ。


 きっと慣れない環境に戸惑ってなったんだと思う。

 風邪が治ってからは毎日、家のことをしてくれた。

 無理に僕がするって言っても、じゃあ一緒にとか。口には出さなくても、これくらいはさせて!って背中が語っていた。




 そして翌日

 こうきさんの初出勤を見送るつもりで、いつもより早い8時に僕は万事屋に出勤した。

 こうきさんは台所で片付けしていた。

 それに、いつも起きるのが遅い銀さんが、今朝はソファーに横になりながらジャンプを見ていた。


「おはようございます」

「おー」

「今日は早起きなんですね」

「何か朝からムラムラきてぉー」

「……そうですか」

 なんだか突っ込む気にもならなかった。

「おはよう」

 こうきさんが台所から来た。

「ご飯食べた?」

「大丈夫です、食べて着ましたから」

「勝手に早く来たダメガネなんか気にすることねーぞぉ」

「そんな言い方しなくても。あっ、これ持って行って下さい」

 新八が持ってきた、弁当を渡す。

「おいおい、それお前の姉ちゃんが作った卵焼きじゃねーだろうなぁ?」

「そんな訳あるかぁっ」

「あれはゴミみたいなもんだからな。食いもんじゃーねぇ」

「大丈夫ですよ、僕が作ったんで持って行って下さい」

「ありがとう。………そろそろ行くね」


 僕と銀さんは下まで見送った。


「あんま無理すんなよ」

「はい」

「夜、ご飯作って待ってますから」

「弁当持ってきたり、ご飯作って待ってますって、お前はオカマですかコノヤロー」

「ちょっと、何てこと言うんですかっ!」


 この掛け合いを見て、こうきさんは笑顔をみせる。


 銀さんはわざとやっていると思う。初出勤で不安げな表情は隠しきてれいない、こうきさん。僕にも分かった。


「それじゃあ、行ってきます」

 精一杯の笑顔が痛々しかった。 どれだけ辛いんだろう。突然、知らない世界に来て、友達とも別れてしまって。考えてもこうきさんの辛さは想像もつかない。


 僕と銀さんは何も言わず、こうきさんの姿が見えなくなるまで、無言でその場から動かずにいた。



 そして


銀時と新八に見送れ、こうきは、屯所の倉庫の前で山崎から説明をうけていた。既に近藤には挨拶を済ませていた。


 倉庫は屯所の隅にある。

十二畳ほどの広さで、天井は高くその分、上に棚が付いている。その棚は壁に面して繋がっていて無駄のない構造だ。


「こんなに散らかっていて汚い所ですが、よろしくお願いします」

「はい、頑張ります」


(何かこの人の笑顔は人を引き付けるものがあるなぁ………でも、どこか寂しいそうなんだよな。慣れない環境だからって、言うだけじゃない様な気がする)


それから、山崎は自分の仕事がある為、倉庫をあとにした。 残されたこうきは倉庫の入口で中を見ながら考えていた。



倉庫の中は、ほとんど足の踏み場もなく書類やら巻物、竹刀に鏡、電球から小物など、他にも使用できな様な物まで無造作に置かれてある。


「……どうしよう」

「何でィ、もうやる気なくなったのかィ?」


 声がする方を見ると、総悟が歯を見せ軽く微笑む。
 総悟の顔みたら少し緊張が和ぐ、こうき。


「いえ、何処から手を付けようか考えてました」

「此処(屯所)はヤローしかいねぇから、片付けやら掃除する奴がいねぇ。こんなになるまで、手を付けねぇ真選組は終わりだな」

「一番、何もしねぇー奴がいっちょ前なこと言ってんじゃねーよ」


 振り返る総悟とこうき。


 そこには、副長 土方十四郎の姿があった。


「どうしたんですかィ、昨日の夜中、トイレで見事に転んだ土方さん」

「んあっ! やっぱりテメェの仕業だったのか総悟っ」

「あれは見物でした。朝の見回りでも行くんですかィ?」

「ったく、ちげぇよ。雑用で新しい奴が入ったって、聞いたから顔見に来たんだよ」

「……初めまして、古城 こうきです」

「おう、副長の土方十四郎だ。近藤さんから話は全部聞いた。知らない世界に来て、大変かもしれねぇけど仕事はちゃんとやってもらうぞ、私情は仕事に挟むなよ」

「……はい」

「あーあ、そんな瞳孔開きぱっなしで話すから引いてるじゃないですかィ。」

「ちっ、総悟さっさと見回りに行って来い」


 そう言うと、土方は煙草に火をつけ中庭の方へと去って行った。

「気にするこたとはねぇ、焦らずやんなせィ。また来やす」


 総悟もいなくなり、気分が落ちていたが、土方の言葉に“負けてたまるか”とやる気だけは増すばかりだった。
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