BLACK 銀魂

□BLACK 銀魂 10話
2ページ/3ページ



 そんな前日の出来事を、思い出しながら作業をしているこうき。


 “うまく行けば、朝には帰ってくる”と、総悟は言ったものの、すでに昼の1時を回っていた。


 局長の近藤に、副長の土方。 そして、一番隊隊長の総悟。 真選組のほとんどが出ているため、屯所の中は、数える程の人数しかおらず、静まり返っていた。


 こうきは心の中で、みんなの無事を祈った。



 それから数時間がたち、隊員たちがゲガをおいながら帰ってきた。


 屯所の中がが、少しずつ賑やかになると倉庫の中から、こうきが出てくる。


 今だ不安な表情で、辺りを見渡していると総悟がこうきの方へ向かってきた。


「ちょっと待ってろィ」


 そう言うと、こうきの横を通り過ぎ、縁側の方から中へ入って行く、総悟。


 顔には傷があり血がでていて、泥もついていた。


 着ている隊服も所々、破れていた。


 その姿から、大変な仕事だったに違いないと、こうきは思いながら総悟を待っていた。


「手当て頼みまさァ」


 少しすると、救急箱を片手に少し疲れた表情で戻ってきた総悟。


「……女中さんとかに、やってもらった方がいいんじゃない?」


 こうきは手当てをしたくない訳ではない。


 自分より、適当な人間が居るのではないかと思っていた。


「……こうきがいいんでィ」


 視線を下に、前髪で目を隠し、表情を見せない総悟。


 こうきは珍しく素直な総悟に、溜め池の方を指をさしながら答えるこうき。


「あそこに座って」


 溜め池の横には大きな岩があり、そこに総悟を座らせる。


 岩には高さがあり、総悟が座るとこうきと同じ目線になる。


 手当てしやすい様と考え、総悟の目の前に立つこうき。


 総悟の膝の隣には、救急箱。


 こうきの手には、ガーゼと消毒液。


「痛くしたら、アルミホイル銀歯で1000回、噛み噛みの刑な」


 総悟の言葉に、こうきは無表情で止まる。


 そして、総悟の目を見て、目が合う二人。


 こうきは、総悟の言葉に恐れたのではない。


 それどころか、挑戦的でもある。


 まるで感情のない、こうき顔。 怒っている様にも見える。


“じゃ、やらないよ”

”やれるものなら、どうぞ“

と、でも言いたげな表情だ。


「……嘘でさァ」


(俺に、こんな顔を向けてくる奴なんて初めてだ)


 心の中で、呟く総悟。


 こうきは、無表情からいつもの顔に戻すと、口を開いた。


「顔に泥ついてるよ…水がないと」

「水なら、食堂にありまさァ」


 こうきは視線を斜め下の溜め池に落とすと、水を眺めた。


 その視線は、ずっと溜め池で動くことはない。


「こんな汚ねぇ、溜め池の水を、俺の顔に付けるってのかィ」



 微笑む、こうき。


 その笑顔は“冗談だよ”何ていいたそうだ。


「水とってくる」


(……面白い奴でィ)


 水を取りにいく、こうきの後ろ姿をホッとした表情で、見つめる総悟。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ