BLACK 銀魂

□BLACK 銀魂 13話
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 残されたこうきと宏行は無言のまま向かい合った。

「まだ江戸にいたんだな」

「宏行も、何でここに?」

 宇宙海賊春雨はそれこそ宇宙規模で指名手配されている。こんなところをのんびりと歩いていられる身分ではないはずだ。

 そう告げると、宏行は先程の男にも似た歪んだ笑みを浮かべて見せた。

「仕事だよ決まっているだろう。この町は俺たちにとっても良い稼ぎ場なんでな」

 それがまともな仕事でないことぐらいは簡単に想像が付いた。何らかの犯罪を行うと言うことなのだろう。

「宏行、そんなことはもう止めなよ。なんで海賊なんて!」

「……随分と楽しそうにやってるみたいだなお前は、俺は結構苦労したぜ、この世界で生きていくために、ま。色々と有ってな。その結果、俺はここにいる。そして俺はそれを割と気に入っている」

 そう言いながら宏行はゆっくりとこうきに近付いてくる。

「それに、前に言ったよな。次会えば、殺すって」

 そう言いながら宏行は腰に差した刀の柄に手を掛けた。

 その動作にこうきは怯え、身体を硬くした。

 少しの間宏行はこうきのことを見ていたが、時期に柄から手を離す。


「が、今はあの人に呼ばれていて忙しい。ここでお前を斬って片付ける時間もない。お前程度の存在なら捨て置いていても問題はないだろうしな」


 鼻で笑い、宏行はこうきの脇を通るとそのまま、先程の男の後を追いかけて歩き出した。

 自分にまるで興味が無いとばかりの表情を見せた宏行にこうきは拳を強く握りしめる。

 このまま宏行を行かせてはいけないと、こうきは思う。なんとかしなければ、と。

「宏行ッ!」

 声をかけ、宏行の肩に手を置いた瞬間、宏行は突然振り返り、それと同時にこうきの腹に拳を叩き込んだ。

「グッ!」

 突然の攻撃に肺から息が勝手に出て、呼吸が出来なくなる。

 こうきはそのまま膝から崩れていった。それと同時に驚くべき速さで刀を抜いた宏行の剣撃がこうきの頭上をすれすれに通り過ぎていく。

 こうきが気がついた時、いつの間にか自分の身体は地面に降りていた。

 腹から上る痛みと、同時に腰が抜けたように力が入らず、立ち上がることも出来ず、こうきは刀を手に自分を見下ろしている宏行を震えながら見返した。

「避けるのは上手いじゃないか」

 彼の口元が裂けて、歪んだ笑みが浮かぶ。

 そしてこうきは気がついた。今自分は死ぬところだったのだと、初撃で簡単に倒れたからこそ、そんなに簡単に倒れると思っていなかった宏行の剣は自分に当らなかった。

 そうでなければ自分の首はあっさりと胴体から離れていたことだろう。

「何だ。立てないのか、お前。坂田銀時の所にいるんだろう? 良いのかよそんな様で」

「え?」

「いずれ、俺たちは坂田銀時を狙う。その時お前の存在が脚を引っ張る事になるぜ」

 そう言うと、宏行は刀を鞘にしまい込んだ。

「さっきも言ったが、今は時間がない。ここでお前を殺すメリットより、殺さないメリットの方が大きい。今、お前が生きていられるのはその程度の理由だ」

 それだけ言うと宏行は動けないこうきにはもう、興味はないとばかりに、その場から離れていった。

「ッ!」

 宏行の背中が消え、こうきは思わず拳を地面に叩き付けた。

 拳から伝わる痛み、それ以上に自分の情けなさに涙が出そうにさえなる。

 そしてもう一つ、宏行が言っていた言葉、自分の存在が銀時の脚を引っ張ることになる。それは以前、春雨に攫われた時から、考えていたことだった。

 自分のせいで銀時に危険が及ぶ。それは、それだけは嫌だ。

 だが、だからと言ってどうすればいいのか。

 誰もいない路地裏で、こうきはただじっと己の拳を見つめていた。
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