MURDERER

□No.28 届け、想い
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春大陸中部

天候 晴れ
気温 快適
湿度 快適


飛空艇ヴェルスバーン

損害 数ヶ所
人員 怪我人多数
死人 十人弱

状況…
 
 
 
 
 
 
 
 
「最悪ですよ…」

「何がだ、コール?」

「いや、いろいろと…」
 
 
 
 
暗い個室。
倉庫のようだ。

扉の向こうは騒がしいが、どうやらここは安全らしい。

コールは飛空艇内で単独で行動し、この個室に隠れている。
今は、第3司令部の飛空艇にいるアドルフ・ヴァースに連絡を取っていたところだった。
 
 
 
 
「ブリッジの盗聴、成功しました。」

「よくやった。で?」

「はい。つい先ほど頭のディーズ・ラストンがブリッジに到着し、合流しました。」

「そうか。やはり、動くか?」

「そのようです。プライド、でしょうね…。それと、重大な問題が…」

「問題?」

「はい。敵はどうやら、空軍本部飛空艇が上空に待機していることを既に知っているようです。」

「何…?どうやって…」

「…接触、したそうですよ。大総統と、ジン達が…」

「ッ!?…そうか、やはりジンもそこに…」

「えぇ。4人、全員…」
 
 
 
 
コールはケータイを片手に、前髪をかきあげた。

その流れで頭を抱え、ゆっくりと目を閉じる。

そしてもたれた木箱を背にズルズルと座り込み、コールはため息を吐いた。
 
 
 
 
「もう、本当に…どうしましょう、アドルフさん…」

「こら、コール。今は任務中だぞ。」

「だって…私、きっとジンにもダリアにも嫌われましたよ…」

「…会ったのか?」

「はい…。でも、区別、しなきゃいけないって思って、きついことを言ってしまいました…」

「…それでいい。彼らもそれほど馬鹿ではない。また会えたとき、彼らなら理解してくれるだろう。」

「…そう、ですかね…」

「あぁ。だから今は、任務に集中したまえ、コール。」

「……はい。」
 
 
 
 
とはいっても、またため息は出る。

電話を切り、胸ポケットにケータイを直し、コールは窓のない天井を見た。
 
 
 
 
考えたくない。

ジンやダリアと、次に会ってしまったときのこと。
愛しい人、ティナがここにいること。


だが考えなければならない。

自分の地位故に。
自分の立場故に。
 
 
 
 
「…行か、なきゃ…。」
 
 
 
 
言い聞かせるように、静かに、腰をあげた。

コールは元スパイ。
故に単独行動は得意。
故に表情を作ることは得意。

だが、今この淋しさには、どうにも勝てそうになく、
彼の表情は曇っていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
涙をぬぐう姿は…


勝ちを願ってのことか?

戦いを覚悟してのことか?

それとも…
 
 
 
 
 
 
 
 
逃げを考えてのことか…?
 
 
 
 
 
 
 
 
「…ティナ、私は…今も君を…」
 
 
 
 
 
 
 
 
――…
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