WIND
□No.15 心で、涙を…
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ゴトッ…ゴトゴトゴト……
気が付けば隣にはダリアは居ない。何かが落ちる音がしたが、前にそびえ立つ魔物は生きている。
スティングは魔物の隙間からダリアを探す。
魔物3体も、後ろに何かを感じたので振り向くと…
『ほら…、お前達の主人、殺してやったぞ?』
魔物につき出すダリアの手には、一人の首があった。それからは脳や血が滴れ落ち、さらにダリアの妖艶な笑みが、彼らの思考を止めさせた。
まさに恐怖…
生きていたはずの人間の傍には、その者の首が落ちている。それは決まって正面下。そう、まるで…
“うなずいて、そのまま首が落ちたような…”
ダリアの技【頷き】はそこから由来しているのだろう…。
今は5人だけだが、ダリアならこれを一気に何百人にでも…
グオオォォォォォッ!!!
再び魔物が叫びだす。
主人が殺されて苛立ったのか、それとも血を見て疼いたのか…。
理由はわからないが、魔物は鋭い爪をむき出し、ダリアに襲い掛かりだす。
ガッ!!!!
だがそんなものが当たるはずもなく、虚しくも地に刺さるだけ。
狙いのダリアはいつのまにやら三匹の背後に。
そして、魔物がもう一度襲い掛かろうと振り向くと…
「俺を忘れてるんじゃないか?雑魚共…。」
普段よりも低い声で、剣を珍しい形で構えるスティングが…。
「…ヴァレフォル…」
その技の名は相当な物好きにしかわからないだろう。
だが、ダリアは知っていた…
「……悪魔の…名前…。」
目の前で三匹の大量の血が舞う中、ダリアは小さく呟いた。
悪魔の名を技名にする彼を
ダリアはどう思ったのだろう…
残酷…ぃゃ、
親しみ…
…………
「何とか…任務完了か?」
『…うん。もう何も居ないかな…。』
何事もなかったかのように辺りを確認する二人。
ダリアは頭の中でスティングの技について気になっていたが、今はまだ聞かなかった。
『…これからどうする?』
「今からなら、アイツらに間に合う…かも…と思ったが無理かもな…。」
『………え?ι』
何やらあやふやなスティングの応答…
自分に合わされていない視線に気付いたダリアは、恐る恐るスティングの視線の先を辿ると…
『ラウルにお説教…されたことある?』
「思い出したくもない…ιあんな地獄絵図…」
『…合流は、まだやめとこ…。』
「…だな…ι」
二人が諦めた…
貨物車のところには、何かの缶を持った魔導士がいた。その缶とは…
『油かな…?ι』
「ガソリンかもな…」
『魔法がファイガだったら…』
「説教どころじゃすまねえぞ…。」
二人はもはや、その魔導士を殺そうとは考えられなかった。
頭に浮かぶは鬼の顔…
耳に響くは案の定…
二人は全速力で走った…
つまり、逃げた。
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