WIND

□No.8 出会い
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ダリアは、ジンの事はあえて口にしなかった。 
 
 
 
 
 
 
 
偶然訪れた陸軍訓練場…

そこに忍び込み、射撃練習場で見た恐ろしい光景… 
 
空軍、海軍を的にし、次々と撃つ陸軍兵。 
 
それを襲い掛かり殺したこと… 
 
陸軍司令部に報告させるために生かしたハースについては言わなかった。 
 
 
それから、自分でも運べそうな空軍女性を選び、それと海軍軍服を持ち運んだこと… 
 
 
 
 
 
 
 
一通りを話した後、ダリアはゆっくりと顔をあげ、アドルフ少将の顔色を伺う。 
 
しかし、アドルフは悲しい顔を見せるものの、怒りを見せてはいなかった。 
 
それはコールも同じで… 
 
 
 
 
 
 
 
「そうか…そんな事があったのか…。でも何故、君は彼女を此処まで運んできてくれたのだね?まぁ、感謝することなんだが…」 
 
 
 
確かに、何の意味もなく運んで来るなんてありえない。

途中で雨が降ったのに、わざわざ二人分の体を引きずり歩く理由もない。 
 
 
 
 
 
 
 
ダリアは言葉を詰まらせた… 
 
本心を言えるわけがないから。 
 
もし言えば、自分の思惑を阻止されそうだから。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
己の首に掛けられた 
 
懸賞金を高くし 
 
高額賞金首になるため… 
 
 
 
なんて…

決して言えなかった 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『これには色々とあって…だから、言えない。』 
 
「…そうか。…ならば仕方がない…。」 
 
 
 
そう言うと、アドルフは立ち上がり懐から何かを取り出した… 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
カチャッ 
 
 
 
「何かを企んでいる賞金首を、そのまま返すわけにはいかないんだよ…」 
 
 
 
 
 
 
 
ダリアに向けられたのは… 
 
 
 
銃口と、二人の卑劣な笑みだった… 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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