WIND

□No.8 出会い
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再び雨を浴びながら、コールの後に続くダリア。

下を向き、何も考えずに歩いていると、不意にコールが後ろに振り返り…
 
 
 
 
「…傘、入るかい?」
 
 
 
耳にしてから数秒後、ダリアは呆れたように言葉を放った。
 
 
 
『…あの、本気で言ってる?』
 
「あぁ。本気だが?」
 
 
 
真顔で言われては困る。

何故か?
それは、周りに自分を一目見ようと集まっている男どもの前で、仲睦ましく相合傘をすればコールは…

と考えたのだ。 
 
 
 
 
『いや…、いいよ。私は平気だから。』
 
 
 
そう言いダリアは再び下を向いた。

するとまた思いがけない言葉が聞こえてくる。
 
 
 
「そうか…。なら私も傘をささない!」
 
 
 
シュッと傘が閉じられる。

驚きで、目が見開けた。

目の前を見れば、いたずらな、だけど純粋な笑みと目が合う。

白い軍服が変色していくにもかかわらず、彼は楽しそうに笑った。
 
 
 
『えっ…、どうして?』

「いいんだよ。ま、雨は嫌いでもないしね。」
 
 
 
コールは手で雨を受け取り、冷たさを感じている。

その姿が何とも印象的で、敵とはいえど、その綺麗さに目を奪われた。
 
 
 
『…変な男…。』

「あ。それ、よく言われる…。」

『うん、だろうね。』
 
 
 
雨に濡れながら、不思議な組み合わせが会話をする。

つねにとっていた一定の距離も、2人は歩くにつれてその距離を縮めていた。
 
 
 
 
 
 
 
一一一一…
 
 
 
とある飲食店…
 
 
 
長身で赤髪の青年が、カウンターで酒を飲んでいた。 
 
カランカランッ!

店のドアに付いているベルが鳴る。
入ってきたのは、言うまでもなく男。

その男は、丁度赤髪の青年の後ろに座る男達のテーブルに駆け寄った。
 
 
 
 
「おぃ!聞いたか!?すんげー可愛い女の子二人が、さっきこの町に来たらしいぜ!?」
 
(女?…でも二人組か…) 
 
「はあ〜?本当かよ?」

「またガセじゃねぇの?」

「いやっ!それが今回は目撃者が大勢いるんだよ!!ついさっき女の子の一人がこの店の前を通ったらしいぜ?」

「うっそ!?へ〜、久々の女だなぁv一度顔を拝みてぇぜ!」

「で?その二人は何処に行ったんだ?」

「ん〜…それが、俺も見てはねぇからよくは知らねぇんだが…。二人はザナルから歩いてきたらしい。」

「マジかよ!ι」

「あぁ。で、さっきこの店の前を通ったらいし黒い服の女の子は、空軍の女の死体を担いできたらしいんだ…。だからかは知らねぇがヴァース少将が来て、司令部にお呼びだしらしい…。もう一人の女の子はすぐどっか行ったんだと…。」


(黒い服?それに空軍の女の死体…。)
 
 
 
荒々しくしゃべった三人は、その後はまたたわいもない雑談になった。
 
 
 
 
「ごちそ〜さま!金はここに置いとくから!」
 
 
 
ガタッと立ち上がり、店を出る赤髪の男。
 
 
 
 
カランカランッ!
 
 
 
 
「ジン・ハルバート、ダリアの危機にお助けってか?」
 
 
 
そう小さく呟いたのは、やはりあのジン。
雨を浴びながら空軍司令部へと向かった。
 
 
 
 
 
 
 
 
――…
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