WIND

□No.8 出会い
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「ほぉ…これはこれは、美しい娘が二人も…。」 
 
 
 
貫禄がある男…
ソイツは顎に手を添え、ダリアとラビンを眺める。
ダリアは少しうざったそう。 
 
 
 
「少将。いけませんよ、初対面なのに…ι」 
 
 
 
その男をあろうことか少将と呼んだのは、おそらく秘書の青年。
 
秘書は、少将のために使用していた少し大きめの傘をたたみ、ダリアの方を見た。
まだ若い。
 
一方、その貫禄のある少将はダリアの前に立ち、握手を求める。 
 
ダリアは始め嫌な顔をしたが、今の状況を考え、素直に手を伸ばした。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『で、…誰?』 
 
 
 
疑いの目は睨みに近い。
そしてまた、その言葉に反応した軍人達の目も、睨みに近い。

遠慮無しの問いだったが、少将は苦笑いをしながら部下達を止めた。 
 
 
 
 
「いや、急にすまないね。私は空軍第3司令部の司令官、アドルフ・ヴァース。聞いての通り少将だ。」 
 
 
「同じく、司令官秘書のコール・サファイル大尉。」 
 
 
 
そう挨拶をしてきた二人は、何処か怪しげな雰囲気。
そう…
何か企んでいそうな…。
 
 
 
 
 
「そして君は…ダリア、だね?」 
 
 
 
ヴァース少将は決して憎らしい笑みを見せるわけではない。
幼い子供を見るような笑みでダリアを見た。

それがあまりにも優しすぎて、ダリアの疑いの心が浄化されそうになってしまう。 
 
 
 
 
 
『ん。…それで、用は?』
 
 

肩に掛かった濡れた黒い髪をなびかせ、後ろにやる。
 
 
 
「…用、とは?」  
 
 
『……。こんな所にお偉いさんが来る程だ。何か用があるんじゃないの?』 
 
 
 
別に挑発している訳ではない。だが、そう聞こえるような口調…。

それに痺れを切らした一人の軍人がこう言った。 
 
 
 
「君。少しは言葉を慎んだらどうだ?」
 
 
『ッ……。』 
 
 
 
その言葉にダリアは眉を寄せるが、あえて何も言わなかった。
 
 
 
 
「いいんだ。それより…後ろで死んでいるのは、うちの軍人かね?」 
 
 
 
ダリアの後方を覗き込む少将。血が染み込んだボロボロの服は、少し気味が悪い。 
 
 
 
『うん。貴方に…伝えなきゃならない事がある。』 
 
「………。何か、訳有りのようだね?」 
 
『…まあ…ね。』 
 
 
 
目を少し伏せるダリア。 

それを見たヴァース少将は、コールの方を向き… 
 
 
 
 
 
「コール。あの空軍兵を司令部に運びたまえ。」 
 
「はっ!かしこまりました!」 
 
「で…ダリア君?少し司令部へ来てもらうよ?」 
 
 
 
少将はポンッとダリアの肩に手を伸せ、そう言い放つと、コールが差し出した傘を受け取らず、司令部へと歩み始めた。

その後コールは部下達に指示をし、空軍女性兵を運ばせた。
 
 
 
 
 
 
 
一一一一… 
 
 
 
 
事はうまく進んだが、ダリアは何か不満げにため息を吐いた。

そして、後ろにいるラビンに声をかける。 
 
 
 
 
 
『ラビン、私は今から司令部に行くから。もう一人で…平気?』 
 
「…うん。ダリア…気を付けてね?」 
 
『大丈夫。』 
 
「…また、会えるかな?」 
 
『会えるよ。今度、ジンを紹介する。』 
 
「…分かった。約束ね?」 
 
『うん。』 
 
 
 
そして二人は握手を交わし、ダリアはコールに連れられ司令部に向かった。 
 
 
 
 
 
雨の勢いは、先程よりも強くはなかった。 
 
 
 
 
 
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