短編置場

□果てしなき前哨戦。
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「くっそ…上手く行くと思ったのに…!!」
傷の手当をしてもらいながら、ゼロスは独り言を呟く。
「何が上手く行くと、だよっ!ったく、何考えてるのかと思ったら…っ!!」
ゼロスの手当をしながら叫んだロイドは、思わずその状況を思い出してしまい、頬を真っ赤に染めた。

…穴があったら入りたい、とは正にあの事ではなかっただろうか。

「何考えてるって…だから、ロイドと俺さまの関係を認め…」
「言わなくて良い!!!」

どうやらゼロスの様子が変だったのは、彼なりの作戦だったらしい。
一体何をどう思って、『誠実なイメージを作れば、クラトスに認めて貰える』などと思いついたのか。
しかも。
「…愛し合ってる、って…。」
「ん?何よハニー。俺さまの素晴らしいアプローチに感動した?」
「誰が感動なんかするかよっ、むちゃくちゃ恥ずかしかったじゃねえか!!」
一体この男は、どんな神経をしているのか…。
あんなのを見せつけて、あんな事を言えば、肉親であれば誰でも怒るであろう。
(もう当分は父さんのとこに行けないな…。)
はっきり言って、弁解の余地もない。

はあ、とため息をつくロイドをよそに、ゼロスはと言うと。
「諦めねえからな…何としても、あの奴に認めて貰わないと…。」
などと言う。
「………ゼロス、何でお前そんなに、父さんにこだわるんだよ…。」
半ば呆れながらも気になるので、ロイドは尋ねる。
するとゼロスは、その質問に驚いた様子だったが、ふ、と柔らかな表情になって。
「そうだな…。先にお前に言っておくべきだったな。」
「…何をだよ?」
全く意味が理解出来ないロイドは、更に質問を続ける。
「相手の親に説得なんて、一つしか考えられないだろ…。」
とロイドに聞こえるように呟き、そっ、とロイドの手を取り、握った。
「な、何だよいきなり…っ。」
思わず体をビクリ、とはね上げてしまうロイドを、ゼロスの真面目な瞳が捉える。

今こそ一世一代の、勝負を。

「ロイド………俺と、けっ」
「いい加減にしろ!!!」

だが、ゼロスが全て言い終えるよりも速く、隣の部屋で治療を行っていた筈のクラトスの攻撃が彼を襲う。

「こん〜〜〜〜〜!!!!」

奇妙な叫び声を残しながら、ゼロスは吹っ飛んで窓から下へと落ちて行った。
「こん…って何だ…?」
「只の叫び声だろう?気にするな。」

知らぬは、当事者のロイドのみで。
当事者を除いての戦いはまだまだ続く…。


とりあえず完…。
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