短編置場

□果てしなき前哨戦。
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何だか雲行きが怪しくなって来た。
二人の間には、明らかに張りつめた空気が流れている。

「な、なぁ…二人共、こんなとこにいるのも何だから、宿屋に戻らないか…?」
この雰囲気はいつもの事からして、乱闘(?)になる可能性が高い。

こんな町中で暴れられては、困る。

「ロイド……しかし…。」
「あ〜…それもそうだなぁ。」
その言葉に、二人は別々な反応を示す。
しかも、ゼロスがクラトスの言葉を遮ったような具合になり、クラトスの表情はより一層険しくなる。

結果的に、状況が悪化してしまったような…。

「ほ、ほら。父さんだって、なんだかんだ言っても疲れてるだろ?」
慌ててその場を取り繕うとして、クラトスの具合を気遣うような姿勢をとってみる。
「そ…そう、かもしれん………。」
息子にここまで心配されては、クラトスも否定する事など出来ない。
「じゃあ、さっさと宿に戻ろうぜ。」
その事に安堵しながら、ロイドは二人に促した。
「あ、ちょっと待て。」
すると、ゼロスがいきなりこう言い出したのだ。
「その前に…ちょっと、良いか?」
「……………。」
「……?何だよ、ゼロス。」

「ああ………。」
言葉と同時、尚も背後から抱きついたままのゼロスが、ロイドの顔を覗き込む。

顔が、近い。

「お、おいゼロス…?」
父がいるこの状況で、ゼロスとこんな体勢でいるのは大変よろしくない。

実際、父は自分とゼロスの関係を良く思っていないのだから…。

「ロイドが来ちまったからな…予定変更と言うことで。」
言葉の意味が分からず、何の予定だよ、とゼロスに問おうとした。
…のだが。


んちゅ。


強引に顔を近付けられ、口づけられた。

「!?!?!?!?」
予想だにしなかったいきなりの行為に、ロイドの思考回路がショートした。
しっかりとその光景を目の当たりにしたクラトスが、未だかつて誰にも見せた事のなかった(後日談)、何とも言えない表情で固まった。
暫くの間、ゼロスがロイドの唇を堪能する音だけが響いていた。
が、ゼロスが頃合を図って唇を離し、力つきたロイドを抱きしめながら叫んだ。

「俺達、愛し合ってるんです。息子さんを俺にください!!!」

次の瞬間、町全体に魔術らしき眩しい光の雨と、轟音が響き渡った。
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