短編置場
□果てしなき前哨戦。
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ロイドの言葉に、クラトスはその通りだというように浅く頷く。
「なあ、何でゼロスはあんな風になったんだ?さっき俺が話しかけた時は結構普通だったぜ?」
ロイドの疑問に、クラトスは首を振る。
「こちらも詳しくは分からん。私の処に来た時は既に、あのような状態になっていた。」
そう話すクラトスの表情は、かなり滅入っていた。
「そっか……。あ、でもさ俺、父さんだったらそういう場合、逃げるんじゃなくて蹴散らすとかするんじゃないかと思ってたぜ。」
何気に凄い言いようではあったが、事実二人がもめているのを何回も見てきたロイドにとっては、この状況こそ不思議だった。
「最初こそはそうしていた。剣、魔術、天使術……出せる力の限りを全て出したのだが…。」
その言葉にロイドは思わず目を見開くが、とりあえず割り込まず先を促す。
「何をやっても、神子は攻撃を…防御もせずに全て受け止めるのだ。しかもどれだけ傷を負おうとも、笑みを絶やすことなく、私に近付き…。」
その時の状況を思い出したのか、クラトスはそれ以降は俯いて何も言わなかった。
「……うわー……。」
………………怖い。
ロイドの頭の中では、全身血塗れのゼロスが満面の笑みでクラトスの肩を掴もうとしている情景が浮かんだ。
想像しただけで、寒気がしそうである。
「でっ、でもさ、あいつさっき話がどうの…って言ってただろ?話を聞いてやったら、もう追ってこないんじゃないのか?」
息子の言葉に、クラトスは再びため息をついた。
「な、何だよ…本当の事だろ?」
自分の提案をはなから否定されたこと悟ったロイドは、父に不平を言う。
「…ロイドよ…。」
そんなロイドをなだめる為、クラトスは言葉を続けようとした。
…のだが。
「ロイド君の言う通りですよ。」
来た。
二人がその声に反応するより速く、ロイドにゼロスの両腕が回った。
「うわっ。」
「全く…ロイドは部屋で待ってろって言っただろうによ?」
背後から抱きしめられる形となって、耳元で低めに囁かれる。
「…神子…。」
その光景を目の当たりにしたクラトスは一気に顔を歪め、殺気を漂わせながらゼロスに語りかける。
「何ですか、お義父さん?」
一方のゼロスは、そんな事気にも止めてないようで。