短編置場

□果てしなき前哨戦。
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先程よりも深い皺を眉間に刻んで呟いたクラトスに、ゼロスはまたしても爽やかな口調で答えた。
「勿論、お義父さんが俺の話をちゃんと聞いてくれるまでに決まってるじゃないですか。」

ゼロスがあまりにも丁寧な言葉遣いをして、笑顔でクラトスに話しかけているという異様な光景。

それを目にしたロイドは、暫く言葉を発せずにいた。
「貴様の話など聞く耳持たん!!」
一方のクラトスは声を荒げて反抗するが、ゼロスはそれに腹を立てる様子もなく。
「まあまあお義父さん、そんな冷たい事言わずに聞いて下さいよ。」
尚も笑顔で語りかける。
「連呼するな!!私は貴様の父ではない!!…すまない、ロイド。邪魔をした。」
クラトスはゼロスの手を振り払い、ロイドへの挨拶もそこそこに早足に部屋から出て行った。
「え、あのっ、父さん…?!」
慌てて追いかけようとしたロイドの腕を、ゼロスが引っ張る。
「お、おいゼロスっ!お前もお前で何か変だぞっ、一体どうした…。」
「ハニーには悪いけど、ちょーっとばかし、留守番してくれな?」
耳元で囁いたゼロスは、いつものゼロスに戻っていて。

ただそれは、真面目な時に発する声質だったけれど。
「ゼロス…?」
きょとんとした表情でゼロスを見れば、やんわりとした笑顔で返される。
そして無言のまま、クラトスの後を追いかけて行ってしまった。
「…何だったんだ?」
物凄く気になる。
ゼロスにああは言われたが、自分の父が自分の…恋人に追いかけ回されているのを見て、気にならない訳がない。
「………行って、みるか。」
暫く頭の中で低回していたが、やがて決意したかのように、ロイドは二人の後を追いかけて行った。

「………まいた、か。」
クラトスは、ゼロスの気配がない事を確認して、息を吐き、座り込んだ。
「父さん!!」
「っ!?」
思わぬタイミングで背後から声をかけられた為に、クラトスは思わず身を強ばらせた。
「…ロイド、か。」
しかし、相手が息子である事を認めると、すぐに肩の力を抜いた。
「大丈夫か!?まだ傷治ってないのに無茶するから…。」
どうやら座り込んだところを見て、疲れていると思ったらしい。
「いや、体は別に異常はないのだ。…只。」
「…ゼロス、か?」
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