短編置場

□短編集。
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word -Lloyd ver.


「…父さん。」
息子のどこか遠慮しがちな声に、クラトスは庭の花壇に水をやる作業を止めて、振り返る。
「ロイド…?どうかしたのか。」
顔は少し俯き加減。
わざわざ外に出てきてまで言いたいことがあるのだろうか。
「あのさ、その…。」
「…変か?」
このじょうろを持つ姿が滑稽だと言いたいのだろうか。
「え、あ、いや、そんなんじゃなくて…。」
どうやら的外れらしい。
だとすると…。
「…神子、か?」
「えっ、ちが…いや、ゼロスもちょっとあるかも、しれないけど。」

…やはりか。

ロイドがこんな調子で話しかけてくるときは、大体あの神子ゼロスが原因なのだ。
息子は『自分が勝手に悩んでいるだけで、向こうは悪くない。』と言い張るのだが、息子を悩ましているのがあの男であることに変わりはない。
「やはり、お前とあの輩との仲を認めるべきではなかったか…。」
「いや、だから違うって…。」
確信していた予想が外れ、クラトスは少し間の抜けた声を出す。
「…違うのか…?」
「うん…あのさ。」
少し、間を置いて。
俯いていたような顔を上げて。

「ありがとう、父さん。」
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