短編置場

□果てしなき前哨戦。
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絶対に、譲れない事だから。

[果てしなき前哨戦。]

爽やかな風が、外から吹き込んでカーテンを揺らしている。
「…良い天気だなあ〜…。」
ロイドは、窓から外の町並みを眺めながら呟いた。
到底世界が危機に瀕しているとは思えない程の穏やかさ。
「しっかし…暇だな〜…。」
長期滞在の為に町は既に散策し終わっていて、する事がない。
同室のゼロスは、今朝からどこかに行ってしまっていない。
「…退屈……。」
そう呟いた後、ロイドは小さくため息をつきながら、ベッドへと倒れ込んだ。

と、廊下から何やら男性の怒鳴り声が聞こえて来た。
どこかの宿泊客の喧嘩だろうか、と身を起き上がらせる。
どんどんこちらに近付いて来ているようだ。
(…止めた方が良い、よな。)
厄介事に首を突っ込むな、と事ある事に仲間から叱咤されてはいる。
が、やはりこういう事は放っておけないところがロイドなのである。
ベッドから飛び降りて扉に近付き、扉を開けようとした瞬間。
「うわっ!!?」
向こうから何者かが、勢い良くドアを開けた。
ロイドの目の前に姿を現した人物とは…。

「と、父さん…っ!?!?」
そう、そこにはクラトスがいた。
何故か、いつにも増して仏頂面である。
「あ、あんた何でこんなとこにいるんだよ!!親父のとこにいる筈じゃあ…。」
そう、クラトスはロイドとの一騎打ちで負傷した傷が癒えていないので、ダイクの家で療養している筈なのだが。
「…何でも何も……あれでは私とて、逃げ出したくなる。」
ようやく口を開いたクラトスの表情は、かなり怒っている、というか、気が滅入っているようで。
「『あれ』…?」
ロイドは何の事だか分からない、と言った表情で首を傾げたが、その後すぐに理由を知る事となった。

「やだなぁお義父さん、そこまでして逃げなくてもいいじゃないですか。」

と、爽やかな声でクラトスの背後から彼の肩を掴む男が現れた。
「………………。」
ロイドには、もちろん声を聞いただけで分かる存在。
ただ、いつもよりも数倍穏やかな口調と声質に一瞬惑わされたが。
「……ゼロス?」
「貴様、その呼び方は止めろと何度言ったら分かるのだ…。」
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