仮面舞踏会
□[始動-中編-]
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〜蒼真家・庭〜
夕食も済ませ一段落着いた後、道着に着替え庭へと出る。
いつもの日課をするためにである。
炎の様な模様が刺繍された黒のズボン。
白い半袖の上衣。
その背中には蒼き龍が刺繍されている。
両手には黒いオープンフィンガーグローブ。
甲の部分には渦の様な白い模様が入っている。
母…蒼真優菜により教えられし綾月流合気道術。
その綾月流合気を振るう者が纏うのが今着ているこの道着。
オープンフィンガーグローブは一騎が優菜より貰った物。
亡くなる直前、仁から優菜の代わりに渡してもらった。
流石に幼少の頃に貰った物なので、今は当然装着できない。
作りなおしてもらった物がコレ。
優菜に貰った物は今でも大切に保管してある。
「今日も綺麗な月だ…」
日が沈み海の蒼さは失せ、漆黒に染まる無限の空。
黄金の満月が神々しい輝きを放ち、その輝きと共に星達は小さく煌く。
今日も相変わらず綺麗な夜空だった。
月明かりに照らされた街。
その内の一つである、我が家。
月明かりに照らされた庭へと出て、道場へと向かう。
-蒼真家・道場-
薄暗い道場の中。
唯一の明かりは、窓から差す月明かり。
それだけでも十分の明るさ。
一礼をしてから中へと入ると、早速サンドバックの前に立つ。
「……………」
このサンドバックの前に立つといつも思い出される過去。
まだ両親も、祖父もいたあの頃。
幼い自分が必死に両親達の背を追いかけ、訓練に励んでいた懐かしき日々。
今となっては、もうそれも出来ない。
この家には自分ただ一人。
所詮は天涯孤独の身といったところか…。
「さて…始めるか」
オープンフィンガーグローブを嵌め直し、拳を構える。
そしていつもの様に、サンドバックに向かって拳や蹴りを打ち込んだ。
サンドバックに打ち込まれる拳や蹴り。
打ち込まれる度にサンドバックは吹き飛び、天井と繋いでいる鎖が軋む。
一騎のいつもの日課。
この時間になれば、毎日道場へと向かい鍛錬を行う。
本来の稽古ならばまず型から入り、それから基本動作、そしてサンドバック打ちの順に行う。
それが終われば、次は得物を用いた訓練へと移るわけだ。