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□デジャ・ヴの少年・おまけ
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「小指どこやった…!」
小声ながら、彼の声が焦っているのがわかる。
脈拍数値が常より早い。
悲鳴のような叫びと共に制止されるも、既に右手の小指のパーツは射出された後だった。
危うく、彼にも負傷させるところであった。
あの綾時という人には見えないよう、私の手を隠して彼は弾丸の所在を尋ねてくる。
「あちらに」
そう視線が示した先にいるのはあの人。
そしてその頭の上、廊下の壁には、はっきりと穿たれたごく小さな弾痕があった。
手を下げさせられた瞬間に射出され、そちらに気を取られたせいか、あの人は気付かなかったようだが、小指は髪をかすめたらしく、前髪が数本ぱらりと額に降りていた。
彼が私の目を見て言う。
「いいか、寮でも、学校でも、影時間以外はどこでも人に向かって銃撃は禁止…!」
そんな。
「それでは珪さんの護衛は務まらないでありま」
「だめ」
「…了解であります」
でも、それでは私は何のために貴方のそばにいるのでしょう。

あの人が帰ったあと、サロンのソファで彼と向かい合う。
「どうして綾時はダメなんだ?」
「…分かりません。解析不能です」
「アイギスでも?」
「はい」
彼は考えるように少し俯いて、それから再びこちらを見つめた。
「…何か、は多分あるんだろうな。アイギスが誤作動を起こしているとは思えない。…でも、綾時は僕の友人だ。」
「…あの人は、ダメであります」
おかしい。声帯装置が不調なのか、絞り出すような声が出る。
「…難しいね」
哀しげに笑う、そんな顔が見たいわけじゃない。
その表情は私にエラーをもたらします。

でも、あの人は駄目であります。

あなたをいつか。

どこか遠く、私が側にいられないところへ…連れていってしまう気が、するから。
 

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